仕事

ライター

前回のこのブログで、貧乏人(私のことです)のくせに、本を買うときだけは財布の紐が緩いのは困ったもんだが、仕事柄しょうがない、というようなことを書いたら、「仕事柄って、何の仕事をしているんですか?」という質問が多数寄せられたので(というのはウソです。すいません。誰にも何にも言われてないけど、ただ単に書くネタが他に思い浮かばなかったので)、恥ずかしながら、私の仕事について書いてみたい。

「何の仕事をしているんですか?」と聞かれたら、「一応、ライターやってます」と答えている。ライターというのは、火をつけるやつじゃなくて、主に雑誌などに文章を書く人のことね。今ならWEBライターといって、インターネット上のメディア(媒体のことをこう言います。例えば紙媒体なら新聞、雑誌、書籍など。ネットならホームページやブログなどを指します)で書いている人が多いんじゃないかな。出版業界はもはや斜陽産業といえるほど不況続きで、紙媒体がどんどん減っているからね。

しかし、そう言っても、「?」という顔をされることもしばしば。出版やメディアなどの業界とは無縁の人もいる、というか、無縁の人の方が多いので無理もない。そんなときは、めんどくさいので、「まあ、新聞記者みたいなもんですね」と、じつにいい加減に説明している。いい加減というのは、厳密にいえば、ライターと新聞記者とは似て非なるものだから。というより、当の我々からすれば、まったく違う職種とさえ言っていい。同じ文章を書く仕事であっても、その目的も、対象となる読者も、仕事の流れも、色々な意味で全然異なるのだが、そのへんをくどくど説明しだすときりがないのでまたの機会に。

とにかく、ライターは新聞記者とは違うのだが、世間的には新聞記者のほうが格上(だと思いますが皆さんはどう思われます?)なので、ライターである私が新聞記者です、というのは語弊がある。下手すれば、見栄っ張りだと思われかねない。しかし、これまたややこしい話だが、「夕刊紙」ってありますよね? 地方の方はご存知ないでしょうが、東京や大阪など大都市圏には「日刊ゲンダイ」と「夕刊フジ」という、「夕刊紙」と称される媒体が流通しており、じつは私は、フリーになる前は(あ、言い忘れたけど、現在はどこにも所属していないフリーのライターです。なのでフリーライターと称することもあります)、「日刊ゲンダイ」の専属ライター(身分的には契約社員)だったし、今でもほそぼそとではあるが「日刊ゲンダイ」からも「夕刊フジ」からも仕事をいただいているので、そうした「夕刊紙」も「新聞」に含むとするならば(これについては色々な見方があって一概には言えません)、一応、私は新聞記者である、といっても当たらずとも遠からず。少なくともまるっきりのウソではないので、「私はライターです」と言っても理解できそうにない人に対しては、「私は新聞記者です」と名乗るのは大目にみてください。

で、話は戻るが、ライターやってます、の前に、「一応」とつけるのは、情けない話だけど、ライター業だけでは食っていけてないから。では、どうやって食っているのかといえば、ありきたりだが、アルバイト?パート?(誰かアルバイトとパートの違いを教えてください)で生計を立てている。バイトの内容は、もうかれこれ5~6年、地下鉄の駅(どこの駅かは一応、伏せておきます)の構内で床の清掃の仕事に従事。終電が出た後に仕事はじめて、始発が出る前には終わるから、時間短めのわりに給料はまあまあ、かな。これが大体週2日。たまに別の駅のホーム清掃があって、それがあるときは週3、4日の勤務になるが、ここ4ヶ月はオリンピックとパラリンピックでその仕事はなかった(11月からまたあるらしいが)。この駅構内もしくはホーム清掃は、東京メトロから直接この仕事を受けている会社の社長が知り合いで、その社長から下請けの会社(つまり今所属している会社)に紹介してもらった。

さらに、週2日のバイトでは足りないので、3年ほど前から、高齢者施設で介護の仕事もしている。高齢者施設は、正確にはグループホームといい、いわゆる老人ホームの一種ではあるが、通常の老人ホームよりはずいぶん小規模な施設と思ってください(そのへんも説明すると長くなるので割愛)。これはライター業の1つで老人ホームを取材して紹介する仕事をやっていた際(今はもうやってないが)、介護という仕事は低賃金のイメージだけど、夜勤なら時間が長い分稼げるし、何より夜勤手当もつく。しかも、グループホームなら無資格でも働ける、という情報を得て、その老人ホームを紹介する会社の人に紹介してもらった。17時から翌10時までの夜勤を、大体週2日のペースで入っている。

介護の仕事内容は、これも詳細は省くが、まあ、人がイヤがる仕事ですよ。汚れ仕事ともいえる。でも、人がイヤがる仕事だからこそ、お金が貰える、と考えれば、無資格無経験の人間が1回の勤務につき2万円近くも稼げる仕事は他にはそうないだろう、と思い、我慢して働いている。そう言うと、イヤイヤ働いているように聞こえるが、これはこれで、楽しかぁないけど、気楽にはやっている。それに、この歳になって、お婆ちゃんたち(ほとんど認知症ですが)から「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と呼ばれて(スタッフは全員年齢に関係なくお兄さん、お姉さんと呼ばれます)慕われるのは、悪い気分ではない。

かように、清掃と介護、2つのバイトを掛け持ちでやっているわけだが、両方ともに夜勤、つまり夜の時間帯(清掃は深夜帯、介護は夕方からだけど)に働き、昼の時間を空けているのは、やっぱり、バイトしながらとはいえ、本業はライターである、という矜持が薄れつつも少しは残っていて、昼間は取材等のライター仕事に当てるため。なんだけど、その肝心のライター仕事がここ数年ガクンと減っていて、恥を忍んで正直にいえば、現在のライター業はほぼ小遣い稼ぎ程度。新しい仕事は少なくともこの5年は入ってない(あ、このブログを書く仕事も含めれば、これが最近入った唯一の仕事かな)。

いやはや、こうして書いていて情けなくなるけど、しょうがない。こうなったのは結局、自分にフリーのライターとしてやっていくだけの力量が、なかった、ということだ。その経緯についても、またいずれ、機会があれば書こう、と思う。いや、どう書いても情けない話になるから、書かないほうがいいかな?

ここで突然、話は変わる(ようでじつは変わらない)が、いつだったかは忘れたけど、「マツコの知らない世界」というテレビ番組を見ていたら、出演者が自己紹介で「ライターです」と言った途端、マツコ・デラックスが「てめえ、ライターなんて、フリーターと同義語だからな!」という意味のことを、罵倒に近い勢いで言った。それを見て、その通り、さすが、マツコは分かっているなあ、と思いましたね。詳しくは知らないけど、どうやらマツコも、あんなに有名になる前は同じような業界にいたらしい、と聞いたことがある。だからよくご存知のようで。

この「ライター=フリーター」論がまさに今の我が身であって、しかも、若ければまだいいが、当年とって50半ばの私は、さしずめ中年フリーター、いや、初老フリーター、かな。トホホ、である。だから、職業を聞かれて、「ライターです」(ライターといってもわからない人には、新聞記者です)と言った後は、そのまま話を逸らして誤魔化して、たまに「ライターだと、どんな記事を書いているんですか?」などと突っ込んでくる人がいるが、過去に書いたことがあるメディアの名を出したりして、これまたお茶を濁していた。が、最近は開き直った、というか、どうでもよくなって、「一応、ライターです」と言った後すぐ、「でも、ライターだけじゃ食えなくて、バイトしてますけどねえ、ハハハ」と苦笑いしながら言うことが増えた。

というのは、サラリーマンだってこの歳になれば定年がみえてくるわけで、定年退職すれば同じじゃん、と思うから。また、今は嘱託だの、大企業なら子会社へ出向だので、もっと長く働く人も多い(年金だけではやっていけない時代だからね)けど、そうなったらなったで、多分、給料は下がるでしょ? だったら、バイトで働くのとそう違わないだろうし、稼ぎは少なくてもバイトには定年がないから、体さえ動けば長く働けるのもメリットの1つだろう。退職金がないのだけは悔しいけど、それはまあ、仕方がない。その分長く働けばいいや、と思っている。

ちなみに、定年退職した後にバイトするのって、色んな意味で辛いみたいですよ。とくに男は。実際、私が働いている職場(清掃も介護も両方ね)にも、定年退職後とおぼしき私より高齢の人が入ってきたことがあるけど、続かずにすぐ辞めた。また、ちょっと話はずれるけど、私が働いているグループホームでは、入居者は女性よりも男性の方が、圧倒的に扱いづらい。とにかく言うことを聞かず、手がかかる人が男性に多い。男は歳をとればとるほど、厄介だ。色んな意味で。

と、まあ、かくして、私の情けないながらもお気楽な中年(やっぱり初老とはまだ言いたくないなあ)フリーター生活は続く。あ、言い忘れたけど、バイトをはじめた5、6年前に離婚して(これまた情けない話だが)、現在は独り暮らしであることも、お気楽中年フリーター生活を続けていられる要因の1つ。お気楽とはいえ、バイト2つ掛け持ちはやっぱりしんどい、と思うこともあるが、それは慰謝料を払うため、でもあるんですねえ、じつは。

しかし、それも来年の2月まで。一人娘が来年の2月で二十歳になるため、慰謝料はそこでストップ。そこからが私のほんとのお気楽中年フリーター生活のはじまりである。って、もう完全にフリーターになっちゃっているが、(一応)本業であるライター業を諦めたわけではない。こんな私でも需要があればまだまだ書きたいと思っていますので、どなたかお仕事ください。よろしくお願いします。