パラリンピックがたけなわですね。皆さん、盛り上がってます? コロナ禍での開催にも関わらず、日本人のメダルラッシュもあって予想以上に盛り上がったオリンピックの熱狂冷めやらぬまま、引き続きパラリンピックでも日本人の奮闘が日々伝えられています。でも、やっぱり、どうしても、オリンピックと比べたら盛り上がりはいまひとつ、と、感じるのは、私だけではないと思いますが、いかがでしょうか。
いやいや、そんなことはない、という方も大勢いらっしゃるでしょう。とくに出場選手の身内の方々や関係者の間では、オリンピック以上に盛り上がっておられることと存じます。そういう方々に対しては、失礼なことをいって申し訳ありません、と平に陳謝致します。そもそもパラリンピックをオリンピックと比べるな、というお叱りの声も甘んじて受け止めます。
かくいう私自身、障害者の支援も趣旨に含む当サイトにブログを書かせて頂いている以上、もうちょっと、少なくとも一般の人々よりはパラリンピックに関心を持たないと、とは思うんですが、せめてテレビで観戦するか、と思ってテレビを点けても、あんまり試合中継とかやってないみたいですね。
まあ、そりゃたまたま私が見逃しているだけで、多分、ちゃんとやってはいるんだろうけど、オリンピックと比べたら少ないのは間違いないですよね。なにしろオリンピック開催中は、いつテレビを点けてもどこかしらのチャンネルで必ずと言っていいほどやってたし、なんなら2つのチャンネルで同じ試合を中継したり、生中継した試合を再度録画で放送したり、とにかくいやでも目につきましたからねえ。それと比べれば……あ、また比べちゃってすいません。
そんなわけで、ほとんど観戦はせずに結果をニュースで知るだけのパラリンピックですが。それでも今まで知らなかったことを色々と知ることができて、少しは興味が出てきました。たとえば、障害者ならではルールとか、その中で世界記録を持っている日本人がこんなにいるんだ、という驚きとか。
あと、当然といえば当然ですが、やっぱり選手の名前や人となりを知ってないと、応援に身が入らないことに改めて気が付きましたね。メダルを獲った人には心から拍手を送りたいし、おめでとう、と言いたいけど、それで終わっちゃいますから。なので今回のパラリンピックを機に、障害者スポーツの選手たちのことをもっと深く知りたいな、と思いましたし、そう思ったのは私の他にもたくさんいらっしゃることでしょう。そんなふうに、少しずつ障害者スポーツに関心を持つ人が増えていけばいいんじゃないでしょうか。そう考えれば、今回のパラリンピックは大成功!と言っていい、と思います。まだ終わってないけど。
前置きが長くなりました(前置きだったのかい!)。これからが本題です。パラリンピックにいまいち関心が持てない私が、パラリンピックにかこつけて、パラリンピック開催中の今こそ読んで欲しい漫画があります。それが『リアル』(集英社刊)です。
作者は井上雄彦氏。といっても知らない人でも、あの『スラムダンク』(集英社刊)の作者といえばおわかりでしょう。『スラムダンク』といえば、1990年から1996年にかけて『週刊少年ジャンプ』に連載され、シリーズ累計発行部数1億2029万部(2013年2月時点)を突破したバスケットボール漫画の金字塔。連載終了して25年ほど経つ今なおファンというより熱狂的信者は数知れず、これを読んでバスケットをはじめたという少年少女も多々いることから、B1リーグ設立に貢献したといっても過言ではない(個人的見解です)名作中の名作です。こちらもまだ読んでない人にはおすすめ。大人でも面白く読めるし、スポーツ漫画が好きな人ならきっと感動しますよ。
そんな『スラムダンク』の作者が、今度は車椅子バスケットボールを題材に描く『リアル』は、『週刊ヤングジャンプ』で不定期連載中。つまりまだ完結していませんが、現在単行本が15巻まで出ていますから、パラリンピックで車椅子バスケットに興味を持ったらこの機会にぜひ。
さきほど『スラムダンク』が大人でも面白く読める、と述べましたが、むしろこちらの『リアル』の方が大人向け。車椅子バスケに打ち込む若者たちの汗と涙の青春物語、というよりは(その一面ももちろんあるんですが)、現実(リアル)に対する葛藤や焦燥、苛立ちを克明に描写。主人公は3人ですが、其々の人生観、其々の挫折、そして其々が模索する新たな生き方--そんなところまで踏み込んで描いてみせた漫画はかつてなかったのではないでしょうか。
とくに、3人の主人公の中で唯一の健常者である野宮朋美(男です)の、何をやってもうまくいかない現実(リアル)への苛立ち、将来への不安感などに、まるで昔の自分をみているような親近感を覚えます。
また、車椅子バスケに打ち込むも、勝ちたい気持ちが強すぎるあまり、チームで孤立してしまう戸川清春。これがかつてのスポーツ漫画では描かれることのなかった「リアル」であるとともに、それでもあきらめず、前へと進む戸川の執念と気持ちの強さに感銘。その先にあるものとは--。
さらに、交通事故で半身不随になった高橋久信の絶望感、そしてリハビリの様子なども、もしかして経験者じゃないのかと思うほど「リアル」。やがて新たな人々との出会いをきっかけに、それまでのプライドばかり高かった自分を変え、車椅子バスケに新たな活路を見出そうとする高橋が、戸川と出会うのはまだ先の話。これからどんな展開が待っているのか、私も気になって仕方ありません。
おっと、まだまだ『リアル』について語りたいのですが、さすがに長くなりすぎたのでこれで止めときます。とにかく、『スラムダンク』で一世を風靡した作者が放つ、恐らく漫画史上初の車椅子バスケットボール漫画『リアル』。個人的には『スラムダンク』を超える名作だと思うので、パラリンピックで初めて車椅子バスケットを見た、という人が増えるであろうこの機会に紹介させていただきました。漫画なんて、と読まず嫌いをしていたら損しますよ。