Bad Tuning

Bad Tuning

毎週木曜日と金曜日は、ほぼ固定で清掃の仕事が入っている。仕事場は地下鉄の駅構内。仕事内容をざっと言うと、まず床に荷電水(と我々は呼んでいるが、正式名称はわからない)を撒き、モップでまんべんなく塗った上から、ポリッシャーを回す。ポリッシャーというのは………説明すると面倒臭いからいいか。まあ、床を磨く機器だと思ってください。

ポリッシャーの画像

床清掃用のポリッシャー

ポリッシャーを回した後は水びたしになるから(回しながら水を出すから)、その後、自洗機(押して歩くだけで自動的にブラッシングしながら水を吸う、乳母車のような形をした機械)をかける。段差があって自洗機が入らないところは、バキューム(これはただの掃除機。ただし水仕様)で水を吸い取り、それから仕上げのモップで拭いて、終了。この行程を繰り返し巡回しながら、およそ2ヶ月半かけて改札内も含めた駅構内すべての床(ホームは別)をキレイにして回る。

仕事がはじまるのは、地下鉄の最終列車が出て、乗客が完全にいなくなってから。ここの駅の最終はたしか24時45分だったかな? はっきり覚えていないのは、この時間にはすでにスタンバイして、すぐ仕事にとりかかれるようにしておかなければならないからで、集合時間は当然それよりも早い。私はいつもだいたい23時に家を出て、24時ちょうどぐらいに駅に着く。それより早く来る人もいれば、遅く来る人もいる。が、まあ、遅くても24時半にはその日のメンバー全員が揃って、最終列車が出て行くのを待っている。

最終列車が出たら、皆でゾロゾロと倉庫へ行き、必要な道具を揃えて、その日清掃する区間へと向かう。そして先ほど述べた行程というか作業にとりかかるわけだが、終わりの時間は、日によって違うものの、早ければ2時ちょい前、遅くても2時半から3時、には終わる。最終列車が遅れたり、掃除道具が壊れたり、といったトラブルでもない限り、3時を超えることはめったにない。つまり作業時間は正味1時間半から2時間程度。えっ?と思うほど短いでしょ。これがこの仕事の最大の魅力なのだが、大きな声では言えないな。これを読んだ皆さんも他言は無用ですよ。

なぜこんなに短時間なのかというと、この仕事は始発列車が来るまでに必ず終わらせないといけないから。始発が来る時間ギリギリまで仕事をしていて、何かトラブルでもあって間に合わなくなったら大変だから、時間に余裕をもって仕事を終わらせる。別の言い方をすれば、あえて時間を余らせて終われるぐらいの仕事量しかしない。

それに加えて、今はメンバーがほぼ固定されており、皆この仕事を長くやっている人ばかりだから、もう阿吽の呼吸で仕事が速い、というのもある。この仕事をはじめた5年前、いや、6年前かな?そのころはたしか、構内すべてを一巡するのに半年ぐらいはかかっていた。その頃と比べると、今はスピードがほぼ倍、とは言い過ぎかもしれないが、格段に速くなっていることは間違いない。「習うより慣れろ」とよく言ったものである。まあ、それだけ単純な作業、ということでもあるけど。

というわけで、仕事自体はすぐ終わるが、終わったからといって、すぐには帰れない。いくつかある駅の出口はすべて最終が出た後はシャッターが閉まり、開くのは始発が来る少し前の4時43分(これはさすがにはっきり覚えている)。この時刻まで外に出ることはできない。つまり、帰れない。

では、仕事が終わってからシャッターが開くまで何をしているか。もちろん後片付けや洗濯(使ったモップやウエスは洗濯機で洗う)はしないといけないし、あと、構内のゴミ拾いをするときもあるが、それもそんなに時間はかからないから、いつもだいたい30分から1時間ぐらいは何もすることがない。その間、ボーっとしているか、スマホをいじるか、寝るか。いや、ちょっとでも眠れりゃいいんだけど、ねえ。いつも寝不足なんだから。でも、眠れない。そういうスキマ時間にちゃっかり眠れる人が羨ましい。

そうこうしているうちに4時43分、シャッターが開く。が、それでもまだ帰れない。車かバイクで来ているなら話は別だが、私は電車通勤。始発を待たなくてはならない。始発列車は5時3分。これを待っている間が最もかったるい時間だが、こればっかりはしょうがない。

で、やっと来た始発電車に、「♪夜明けを待って~、一番電車♪」と、中島みゆきの「悪女」の一節を歌いながら(頭の中でね)乗って、上野で乗り換え、三ノ輪に着くのが5時45分。駅前にある24時間営業のスーパーに寄って朝飯を買い、家に帰りつくのがだいたい6時ぐらい。飯を食って、風呂に入って、さあ、寝るぞ、というときにはもう7時か7時半になっている。

これが木曜夜の夜勤明け、つまり金曜の朝、であれば、金曜夜の出勤時間(23時)まで16時間あるから、睡眠時間はたっぷりとれる。ほんとはこの時間にライター仕事の取材なんかを入れたいのだが、最近は、このブログでも度々言っているが、ライター業はほとんど開店休業状態なので、仕方なく、この時間はたいてい日頃の睡眠不足解消に使っている。

地下鉄の構内の写真

ところが、じつは先日、珍しくライター業の取材が木曜の夜勤明けの金曜日に入った。しかも、飲食店の取材はたいてい午後だが、この日の取材は珍しく午前10時半から。しかもしかも、飲食店の取材だけど店には行かず、オンラインでの取材である。これはたまたま関西の店を取材してくれ、という依頼だったからで、Zoomを介してのオンライン取材。じつは初めての経験である。

いや、初めてといっても、私は以前にZoomは使ったことがあるので、まあ大丈夫だろう、と思っていたら、私の方は問題なかったのだが、先方の方で問題があり(音声が入らなかったらしい)、結局は電話での取材となった。まあまあ、それでも別に問題ないけどね。

それは兎も角、夜勤明けの金曜の午前中、珍しく午前中に飲食店の取材を、これまた珍しいオンライン取材(結局は電話取材になったが)で無事終えて、さあ、やっと寝れるぞ、と思った午前11時頃。ウトウトしていて、ハッ!と目覚めて時計をみると、まだ午後3時。安心してまたウトウトして、またハッ!と目覚めると、あれ?時計をみると3時のままなのに、外は暗い。おかしいぞ?

慌ててスマホで時間を確認すると、なんと午後8時。つまり部屋の壁掛け時計が3時で止まっていた、というわけだ。危ねえ危ねえ。これが時間に余裕がある金曜日でよかったが、もしも介護施設の出勤日だったら寝過ごしていたかも。時計が止まるって、怖いよねえ。

この壁掛け時計は、前に住んでいた一軒家から持ってきたものだが、電池を代えた記憶はないから、多分そのまま使っているうちに電池の寿命切れ、ということだろうけど、時計の電池って、なまじ長持ちするから、替え時がわからないよねえ。

ともかく電池を入れ替え、時間を合わせて午後8時。また少しウトウトするうち、そろそろ出勤の時間が迫ってきたので、出勤の準備をする。冬場は着替えぐらいでとくに用意するものはないが、夏の暑いときは、私は水筒を持参するようにしている。駅は夜間空調を切られるので暑くてたまらない。そこで水分補給のため自販機でジュースなど買うわけだが、1、2本ならいいよ。だけど夏の暑いときは1、2本じゃ済まず、3本も4本買えば4、5百円はかかる。もったいない。

だから水筒である。この日も水筒にウォーターサーバーから水を注ぐ。いや、貧乏人のくせにウォーターサーバーなんて、生意気だ、と思われるかもしれないが、これ、使ってみると、意外にいいですよ。私は今住んでいるマンションが古く、水道もちょっと水漏れしたりしてボロいので、水質に不安を抱き、水道水は飲まないようにして、スーパーでミネラルウォーターを買っていたのだが、それも面倒に感じていたところにたまたまウォーターサーバーを勧められたので試しに導入したら、意外に便利。なんといっても、冷水と温水がすぐ出るのがいい。温水はそのままカップ麺に使える熱さだから、お湯を沸かす必要がない。そもそもガスコンロを持ってない私は重宝している。

話を戻すが、この日も出勤前にウォーターサーバーから水筒に冷水を注ごうとしたら、あれれ?水が出ない。おかしいな。何度やっても出ない。そんな複雑な機械じゃないのに。いや、複雑じゃないから逆に、故障かどうかもわからない。困ったなあ。

困ったけど、時間がないから、仕方なく、この日は水筒なしで出勤した。まあ、いいや。私には秘密兵器がある。それは何かというと、皆さんは「Coke ON Pay」ってご存知ですか? アプリをインストールして、対象の自販機で飲み物を買えば、1本につき1枚スタンプが貰え、スタンプ15枚で飲み物1本が無料になるという、あれです。やっている人も多いでしょう。

Coke on Payの画像

私は水筒を持っていかない冬場はこの「Coke ON Pay」でコツコツとスタンプを貯めており、無料のサービスチケットを4枚ほどゲットしている。いや、いい年こいたオッサンが恥ずかしながら、じつは私、こういうスタンプとかポイントとかをわりとよく貯める派で、いわゆる“ポイ活”オヤジです。恥を忍んで告白しますが。

だけど、あらゆるポイントというポイントはたいてい1ポイント=1円で、相当頑張ってもたいして稼げないのに比べると、「Coke ON Pay」のスタンプは1枚で約10円相当だから割がいい。それに、1本買うとスタンプ2倍などのキャンペーンなんかが結構あって、意外に溜まりやすい。皆さんもやったほうがいいですよ。

というわけで、水筒がダメでもスタンプがあるさ、と意気込んで出勤したその日、仕事が終わって、さて、冷たいもんでも飲もうか、と、いつもの「Coke ON Pay」の自販機で無料サービスチケットを使おう、としたら、あれれ? なんかしらないが使えない。どうなってんだ?

仕方がないので、普通にお金を払って(支払いはPASMOで)買ったら、なんと、スタンプもつかない、ではないか。怒髪天をつきましたね(天をつくほど髪の毛はないけど)。それにしてもこの日は、時計は止まる、ウォーターサーバーは出ない。サービスチケットは使えない、スタンプはつかない―――こんな、何やっても何もかもがダメダメな日、というのもあるんだなあ。

というわけで、今回はこれにて。唐突ですが話は終わりです。いや、ただ、ダメダメだった、というだけの話で、オチもなくて、すいません。たまにはこんなしょーもない内容をお許しください。そんなのいつもじゃねーか、という声には聞こえないふりをしつつ、また次回で。ちなみにウォーターサーバーは、仕事を終えて帰宅後、再度試したら普通に水出ました。「Coke ON Pay」も翌日はちゃんと使えました。一体、あの日はなんだったんだろう?