健康診断

気がつけば今年ももう残りわずか。1年経つのなんて、あっ、という間ですなあ、などとこの時期アップされるブログとしてはまことにありきたりな文言ではじまりました今回ですが、内容はタイトルの通り、大晦日も正月も年末年始も関係ない、「健康診断」の話です。

というのは、この12月に、いま私が勤めている介護施設で健康診断を受けるように言われて、私が行ったのは12月12日の月曜日だったかな? とにかく、なんでこのクソ忙しい12月に、わざわざ健康診断をやるかなあ、と思った。そんなのいつでもいいんじゃね?

などと、師も走るほど忙しい(だから師走というのがホントかどうか知らないけど)らしい12月に健康診断があることにぶつくさ文句垂れる私。この施設に入る前は健康診断なんて受けたためしがなかった(ずーっと非正規雇用だったから)ので、面倒臭さはひとしおである。といいつつ、じつは、ほんとのこといえば、私はべつに12月だからといって、いつもより忙しいことはないんだけどね。

なにしろ年賀状は出さない(だから私宛に年賀状は出さないでね)、大掃除なんかしない、ええっと、あと12月にやるべきことは?と考えても何も思いつかない。それぐらい何もしない、ズボラな私にとっては、12月だろうといつもの月と変わらない。

じゃあ文句言うなよ、と思われるだろうが、文句の矛先はもう1つある。健康診断って、年に1回じゃないの? 前回受けてからまだ1年経ってないぞ、と、そう言いたかった。前回の健康診断がいつだったかは覚えていないが、そのときは、終わったあとその足で「唐揚げのジョンソン」へ行ったことは、はっきり覚えている。

「唐揚げのジョンソン」を取材したのがたしか3月だったから、まだ1年経ってないのは間違いない。と、思うが、書いてるうちに自信がなくなってきたので、面倒臭がりの私にしては珍しくちゃんと手帳を捲って確認したら、「唐揚げのジョンソン」の取材はやっぱり3月だった。そして前回の健康診断受けたのは、6月7日であった。

なんと1年どころか、まだ半年しか経ってないではないか。もしかして、この施設では半年ごとに健康診断受けなきゃいけないの?めんどくせえなあ。と思ったが、そのことついて上の人にかけあうのもめんどくさいので、まあいいや、と、文句も言わず、素直に健康診断の実施場所へ向かった。夜勤明けにそのまま行けば、待たずに受けられるのはありがたい。帰りにまた「唐揚げのジョンソン」へ行こう。しばらくご無沙汰だったから、いい機会だ、と自分に言い聞かせて。

そして当日、前回と同じ健康診断の実施場所(病院ではなく、病院が出張した診療所)へ行くと、意外にも、若い看護師の姉ちゃんがいた。若いといっても、三十は過ぎているだろうか(それでも私にとっては若すぎるほど若い)。可愛いかどうか、は好みの問題なので、ここでは差し控える。が、若い姉ちゃんが看護師の制服着てれば、誰でも(たとえブスでも)可愛くみえるだろう、と、自分で自分に突っ込みを入れたことは、ここだけの秘密である。

看護婦の画像

前回はおばちゃんばかりだったように記憶しているので、ちょっと(正直にいえば、かなり)舞い上がった。いや、だからといって、ナンパしよう、とかはないけどね。ただ、若い姉ちゃんが担当してくれるだけで浮かれるバカなオジサン(私のことです)を笑ってやってください。なにしろ普段は女っ気がない生活なもので。

ちなみに、今は「看護婦」といってはいけないらしいので、「看護師」と表記する。そのへんは、仮にもプロ(と、胸を張れない現状ではあるが)のライターなので、ちゃんとする。と言いつつ、それでは性別がわからないし、堅苦しくもあるので、あえて、お姉ちゃん、と、くだけた呼び方をお許しいただきたい。

で、そのお姉ちゃんに導かれて診療室に入り、古いけどやけに重厚なソファ(なぜか椅子ではなくソファだった)に座って、まずは血圧を測ってもらう。私、血圧は普段から高めである。ましてや夜勤明けだから、かなり高い数値が出るのは覚悟していたが、案の定、お姉ちゃんから、「かなり高いですね~」と、言われた。

そこですかさず、「お姉ちゃんが美人だからじゃないの?」と、軽口を叩く私。いや、私、さほど冗談が上手い方ではないんですけどね。でも、そのときは、美人かどうかは別として、若い姉ちゃんに血圧測ってもらって浮かれた気持ちが(我ながらバカだねえ)、抑えていたつもりだけどつい出てしまった、かもしれない。

もしくは、そのソファに座るとき、私が「ずいぶん立派なソファだねえ」というと(診察でソファは珍しかったので)、そのお姉ちゃん、「ボロボロですけどね~」と気さくに返してくれて、おや、もしかしたらこのお姉ちゃん、愛嬌あって話しやすい人なのかも、と、チラッと思った、のもあった、かもしれない。

ともかく、血圧が高いのは、アナタが美人なので私はドキドキして血圧が上がったから、という意の冗談を、冗談下手の私にしては珍しく、さりげなく、うまいこと言えた、と思ったらそのお姉ちゃん、「そうですね~、それもあるかもしれないですね~」と、軽くいなすではないか。ちょ、慣れてやがる。

血圧測定の画像

それで会話が終わってしまったのが私のダメなところだな。いや、終わってないけど、「いつも高めですかー?」とか、「家で測ったりしてますかー?」などと、ありきたりの会話になってしまい、それはつまり彼女のペースなわけで、不甲斐ないよなあ、私。こういうときに、2のジョーク、3のジョークを矢継ぎ早に繰り出して、場を盛り上げる、陽気で明るい愉快なジジイに、私はなりたい。

ほら、時々いるでしょ。下ネタをバンバン言うのに、なぜか女性に嫌われない、どころか、不思議と若い女性からモテる助平親父。それも1種の人徳だろう、と私なんか思っていて、自分はとてもそんな真似できないから、ある意味、憧れている。といっても過言ではない。

てなことを、あんまり言ってると、当ブログの数少ない女性読者が、サーっとドン引きする音が聞こえてきそうなので、これぐらいで止めて、話の続きを。そのお姉ちゃんに血圧測定、それから採血してもらった後、身体測定や視力・聴力検査に移る。担当もお姉ちゃんからおばちゃんに代わった。そのおばちゃんは看護師の制服ではなく、事務職のような服装だった。看護師ではないけど、身体測定や視力・聴力検査は看護師の資格がなくてもできる、ということだろう。

その視力検査のときだった。以前も述べたと思うが、私は右目と左目の視力が極端に違う、いわゆるガチャ目である。左目は0.5(以前よりまた落ちていた)だが、右目は目の前のものさえぼんやりとしか見えない。それは検査すれば当然わかるわけで、そのおばちゃんは「へえ、左目だけで生活しているんですねえ」と、感心したように言った。

そこで、眼鏡をしつらえにZoffだか何だか最近多い眼鏡の量販店へ行ったものの、あまりに左右の視力が違い過ぎて、眼鏡はできない、と言われた話をすると、意外にもフンフンと興味深げに聞いてくれた。

そういうところは、若いお姉ちゃんよりおばちゃんの方がいいね、と思ったけど、話のネタとしては面白くないので、以下省略。その後、心電図やレントゲンなど諸々の検査を終え、最後に医者の問診を受けた。

その医者が、やねえ。私が個室に入るといきなり、「脱いで」とぶっきらぼうな命令口調。それはいいとしても、さらにその医者は、「血圧高いねえ」と言いつつ、むんずと私の腕を掴んで血圧を測り直し、「やっぱり高いな。これは薬を飲むことも考えないとね」などと、完全にタメ口である。ちょっと、ムカッとしましたねえ。

いや、まあ、いいんだけどね。見たところその医者は私より年上のようだし、でっぷり太って貫禄もあって、もしかしたら院内では相当偉い人なのかもしれない。そんな偉い医者が、人手不足だか何だか知らないけど、通常は若手が回されそうな健康診断なんぞに駆り出されりゃ、面白くなくてぞんざいな口調になるのも、わからないではない。

医者の画像

しかしそれは(もしそうだったとしたら)、病院側の都合であって、患者や健康診断の受診者には関係ない。むしろ、実るほど頭を垂れる稲穂かな、の例えもあるように、偉くなればなるほど、患者や一般人には丁寧に接するべきだろう。

ましてや、このコンプライアンスに厳しいご時世、健康診断でタメ口はない、と思うが皆さんはどう思いますか? だって、健康診断の受診者は、患者ではないでしょ。ある意味、お客様である。お客様には敬語を使うのが常識だ。なのにその態度はなんだ、どっかに告発するぞ、コノヤロウ。

と、思ったが、もちろん口には出さず、黙って従う。私もいい大人だからね、悪い意味で(このフレーズ、最近多いな)。しかし、口には出さずとも、ムッとしたのが顔に現れていたのか(私もまだまだ青いね)、その後もずっと、「そこに寝て」とか、「胸を出して」とか、短い命令口調は続いた。そのぞんざいな(と思ったのは私だけかもしれないが)診察はあっという間に終わり、私が部屋から出ていこうとすると、その医者は言った。「シケツバンドを外して」と。

ん?シケツバンド??? 一瞬、何のことかわからず戸惑った私が、あ、止血バンドのことか、と気がついた(採血した後だったので腕に止血バンドを巻いていた)その前に、その医者、チッ、と舌打ち交じりに「シ・ケ・ツ・バンド!」と大きな声を出した。いかにもイライラした様子で、そんなこともわからないのか、と言いたげに。じつに、ヤ~な感じ、であった。

いやあ、最近はコンプライアンス問題もあって、医者でも患者や一般人には敬語が当たり前、の時代だと思っていたら、久々に遭遇した、もはや時代錯誤の傲慢医師である。こんなのがいまだに偉そうに、幅を利かせているんだなあ、と思うと、もはや怒るというより呆れるが、実際問題、私が知らないだけで、病院内ではまだまだこういうヤツが多いんだろうな。

などと憤慨しつつも、そこでキレる勇気もない小心者の私は、あ、すいません、と情けなくも卑屈になり、止血バンドを外して医者に手渡し、部屋を出た。こういうとき、内心では腸が煮えくり返っていても表面上は冷静に、どんなに相手が偉かろうが毅然として、「そんな言い方はないでしょう」と、言い返せるような人に、私はなりたい。

かくして、若いお姉ちゃんに浮ついたり、傲慢な医者に憤慨したり、言い返せない自分に落ち込んだりと、なんだか妙に忙しかった(気持ち的にね)健康診断は終了。気を取り直して、さあ、飲むぞ、とばかりに「唐揚げのジョンソン」へと向かう。

しかし、「唐揚げのジョンソン」の開店は12時。それまでまだ時間があるので、近くの「コメダ珈琲」へ寄って時間をつぶし、満を持して辿り着いた久しぶりの「唐揚げのジョンソン」は、嗚呼、なんてこった、無情にも閉まっているではないか。シャッターに貼られた「月曜定休」の札が、がっくり肩を落とす私をあざ笑うかのように揺れていた。

うーん、月曜定休を知らなかった私が迂闊なのか(私はてっきり無休と思っていた)、それとも、最近になって月曜定休になったのか、それはわからない。けど、どっちにしてもその場ではどうすることもできず、トボトボときびすを返して帰途に着く私。なんだかここのところ、こんな間抜けなことばかりだな。つくづく、何をやってもうまくいかない我が人生を呪いつつ(そこまで大げさな話じゃないけど)、これを今回の話のオチとする。オチになってるかな?