或る一日

介護士の写真

現在の時刻は午後11時。例によって介護施設での夜勤中にブログを書いている。じつはその前(つまりこの原稿を書く直前ね)、時刻にして9時から11時までの約2時間で別の仕事もこなした。その仕事は、飲食店を取材して紹介文を書くことで、書いた原稿はかつて私が勤めていた某夕刊紙ではなく、そのライバル紙と目されるもう1つの夕刊紙に掲載される。締切は月曜の朝一だけど、いま(土曜の夜です)終わらせることができて、ホッとしている。いつも原稿はたいがい締切ギリギリ、というか、締切ギリギリにならないと書かない怠け者(私のことです)にしては珍しく、余裕の進行である。

とはいえ、介護の夜勤中に別の仕事をするなんて、本当はダメ、だよねえ。ここの施設の関係者がこのブログを見たら、怒るでしょうなあ。まあ、まず見ていない、と思うからこうやって書いているわけだけど、困ったことに、最近は自宅で書くよりここ(介護施設での夜勤中ね)で書くことの方が多くなっている。なんか、自宅ではやる気が起きないんだよねえ。イカンなあ。あ、センサーが鳴った。ちょっと行ってきます。

 

はい、戻りました。このフロア(3階です)に9人いるうちの唯一の男性である爺さんが、寝小便して目を覚まし、ベッドから起き上がるとセンサーが鳴るので部屋に駆けつけ(すぐそこだけど)、トイレに連れて行って、オムツ(ここではリハパンという)やその中に挟んでいるパットはもちろん、ズボンもシャツも上着まで小便で濡れているので全部着替えさせ、ベッドに敷いてあるラバーシーツ(防水シーツね)も交換して、また寝かせてきた。

このように、センサーが鳴ると部屋に駆けつけなければいけない人が、この爺さん含めて3人。また、センサーはないけど、車椅子でトイレに行けないから寝る前に1回、夜中(だいたい午前1時ぐらい)に1回、起床時に1回、計3回オムツ交換しなければいけない人が3人。つまり9人のうち6人に手が掛かる(世話がやける)。そして残り3人のうちの2人も、時々お漏らしをする。というわけで、まったく手がかからない人は1人だけ。他の8人すべてに手がかかり、さらに、その中には寝たきりの人も1人いる。これはこの施設に3フロアある中で、もっとも重篤といえる。私は時々2階のフロアに入ることもあるが、2階は3階に比べると、全然ラクだ。その差たるや、まさに天と地のごとく。フロアによってこんなに大変さに差があるのは、どうにかならないもんか、とも思うが、まあ、しょうがないか。

1年ほど前は、3階よりも2階の方がずっと大変だった。ところが、2階の手がかかる人が次々と入院したり、お亡くなりになったり(することもあるんです)して、みるみるうちに楽になっていった一方、3階ではそれまで元気で自立していた人がどんどん車椅子になったり、認知症が進行、つまりボケてきたりして、あれよあれよという間に2階より3階の方がしんどくなった。だからできれば今は2階に入りたいのだが、なぜか私に割り当てられるシフトはほとんど3階で、2階は月に1、2回程度。不公平だ!という問題でもないか。おっと、12時になったので、巡視・安否確認に行ってきます。

 

はい、戻りました。巡視・安否確認とは、9時(21時)、12(0時)、3時に利用者様(といいます)が寝ている各部屋を見て回ること。各部屋の扉をそ~っと開けて、ちゃんと寝ているか、重篤者であれば、生きているか(まれに呼吸をしていない、すなわち死んでいた、ということもあるそうなので)を確認する。問題なければ、タブレットに「入眠中」と入力。合わせて、この日の排泄回数や摂取した水分の量なども合計(記録してある)して、入力する、という仕事もある。

タブレットが導入される前はすべて手書きだった。これに結構時間がかかっていたが、タブレットになってずいぶん早くなった、という見方もできるが、私に言わせれば、ここの介護記録システムはどうも使い勝手がよろしくない。もっと使いやすいものがあるはずだ、と思っている。他を知っているわけではないけどね。そうこうしているうちに、1時になったので、車椅子の3人のオムツ交換に行ってきます。

 

はい、戻りました。こんなふうに、夜勤の間にやらなきゃいけないことが色々あって、結構忙しい。かつて、私がここの施設で働き出した3年ほど前は、いま手が掛かっている利用者様が皆元気で、トイレにも自分で行けて、ほとんど手がかからず、楽だった。今となっては信じられないことに、仮眠をとることさえできたものだ。

それが今では、先ほどのように度々センサーが鳴るから、仮眠どころではない(と言いながら、他の原稿を書いているじゃないか、というツッコミには聞こえないふりをします)。さらに今後、利用者様はどんどん歳をとっていくわけだから、これからもっともっと、大変になっていくのは自明の理。やれやれ、気が重いですな、まったく。とはいえ、今日(この原稿を書いている日のことね)は、たまたまだろうが、9時から11時まで1度もセンサーが鳴らず、その間に原稿1本書けて、まあよかった、よかった。

最近、利用者様の1人に、現実と夢(または妄想)の区別がつかなくなった人がいる。たとえば娘さんが訪ねてきた夢を見て、「娘が来ているはずだけど、どこ?」などと言いつつ廊下を徘徊したり、仕事をしている夢を見て、「お金を払わなきゃ」などと言いつつ押入れをあさったり、そうやって夜間ずっと眠らず、ウロウロするもんだから、最近の夜勤者は目が離せないし、休むヒマもない。

そんな困った人もいるから、しばらくは夜勤中に原稿書くのは無理だろうなあ、と思っていたら、どうやらその人の妄想&徘徊は2、3日続いた後で、さすがに疲れたらしく、今日に限ってはよく眠ってくれた。というわけで、無事に原稿仕事を1本終わらせ、続けて書きだしたこのブログ、途中でオムツ交換や巡視・安否確認などしながらここまで書き進めてきたけど、3時になったので一旦、ここでストップします。

というのは、3時の巡視・安否確認の後は、朝食の準備をしなければいけないから。朝食は、ご飯は炊飯器にタイマーでセットしてあるし、惣菜はただ焼くだけ、野菜を茹でるだけ、あとは味噌汁をつくれば終わり、でカンタン楽チン。時間もかからずちょいちょいとできる。けど、夜勤者は朝食だけでなく、昼食の下準備(野菜を切るぐらいだけでど)もしなければばらないし、寝たきりの人(が1人います)に皆より先に朝食を摂らせる(ほとんど水分だけだけど)という仕事もあるので、朝食の準備は早め早めにしておくに越したことはない。

介護施設での夜勤で何が大変かって、もっとも大変なのはやはり朝の起床時である。オムツの人はほぼ100%、漏れなく(オムツだけに、って下手なシャレを言ってる場合ではない)失尿(お漏らし)しているので、オムツ交換は必須。オムツ交換で済めばまだいいが、オムツに留まらず、ラバーシーツや衣服、ときにはシーツや布団カバーまで洗わなければならないことも日常茶飯事。朝方、朝食の準備中にそんなことやられたら、もうパニックですよ。てんやわんやで朝食の時間が遅れて、朝やってくる早番に迷惑をかけてはいけないので、忙しくなる前にできるだけの準備はしておいて、利用者様を全員起こして整容(顔洗ったり歯を磨いたり、夜の間外しておいた義歯をつけてうがいをさせたりすること)を済ませたら、すぐ朝食を出せるようにしておく。これ、鉄則です。

それでも、自分では歯も磨けない、うがいもできない、という人がほとんどだから、慣れた今でもなかなか大変ですぜ。いつもヒイヒイハアハア、額に汗かきながらやってます。ひどいときには、寝ている間にオムツに手を突っ込んで、手にウンコがついている人がいて、その手を洗おうとすると、「冷たい!」といって嫌がる始末。ウンコまみれの手を「水が冷たいから洗わない」って、信じられる? 世話をしているこちらとしては、情けないやら腹が立つやら。だけど、これが認知症というものですよ。介護という現場の現実はこんなもんですよ。やれやれ。おっと、いかんいかん。3時を過ぎた。そういうわけで、早めに朝食の準備をするため、この原稿は一旦止めて、続きは後ほど。

 

 

はい、戻ってきました。時刻はただいま午前11時。夜勤明けで、日付が変わって日曜日。場所も変わって、今は大森駅前にあるアーケード付の商店街の中、カフェベローチェでこの原稿を書いている。

以前も述べたと思うが、夜勤が明けて帰宅途中の寄り道は、主に鶯谷駅前のサウナもあるスーパー銭湯か、または同じく鶯谷駅前で「日高屋」で餃子に生ビールか、もしくは「ガスト」でハッピーアワーの200円生ビールか、大抵はその3択だった。しかし、ここのところはあまりの寒さに、スーパー銭湯は控えている。サウナ上がりに寒風の中歩いたら風邪引きそうだから。

また、「日高屋」も「ガスト」も、大森駅前にもあることに気がついてからは、大森駅前でどこかによって一杯引っ掛けることが多くなった。大森駅前の「ガスト」は、鶯谷駅前の「ガスト」より若干広めで1人用の席もあるから、夜勤中に書きかけて終わらなかった原稿を、大森駅前の「ガスト」でハッピーアワーの200円生ビールを飲みながら仕上げることもしばしば。今日もほんとは「ガスト」にしようと思いきや、日曜日はハッピーアワーがないので、止めた。だって、定価で飲むと高いんだもん(いい年してセコいな)。

代わりに「日高屋」という手もあるが、大森駅前の「日高屋」は駅の反対側なので、わざわざ行くのは面倒臭い(たいした距離じゃないけどね)。それより、大森駅前には「餃子酒場」というのがあり、こちらはなんと24時間営業、生ビールは300円、餃子ひと皿も300円。私の店選びの基準は生ビールと餃子がいかに安いか、だから、ここでもよかったのだが、あえて今日は「カフェベローチェ」にしたその理由は、ビールよりコーヒーが飲みたい気分だった、というのもあるにはあるが、それよりも何よりも、ここはアルコール抜きで真面目にさっさとこの原稿を仕上げて、それから呑みに行こう、という魂胆があるからだ。

飲みに行く先は、近く(というかベローチェの隣)にあるもう1つの24時間営業の酒場でもいいし、11時オープンの安いけど刺身が意外にちゃんとしている赤ちょうちんでもいいし、この間見つけた、ハイボール95円ながら新鮮レバテキが旨かった肉のなんとか、という店もいいなあ。

そういうふうに、朝というか昼酒が飲める店の選択肢が多い大森は、素敵な街である。このへんの話はもっと詳しくしていきたい、ところだが、おっと、こんなことグダグダ書いているうちに12時を回ってしまったではないか。どうでもいい原稿はさっさと切り上げて、飲みに行こう。どこへ行くかは、またいずれ。というか、大森駅前の昼呑みができる店の話は、また改めてするつもりなので、お楽しみに(というほどでもないか)。では、行ってきます。