あんこう

「アンコウが食べたい」と誰かが言ったので、今日はアンコウの日。どこかで聞いたようなフレーズだな、と思っても気にせずスルーしてね。そういうわけで、アンコウを食べてきました。それもクリスマスイブに。

なぜクリスマスにアンコウを?と、疑問を持たれた方に言っときますけど、じつはクリスマス(イブも含む)にアンコウを食べるという習慣は、ある特定の地域では昔からありまして、知る人ぞ知る、知らない人は知らないクリスマスのお祝いなんですよ。

そもそものはじまりは、日本にキリスト教が広まった戦国時代から江戸時代初期にかけて。布教のためその地域を訪れた宣教師が、地元民からアンコウを使った郷土料理を振舞われ、その旨さに感動したことから、キリスト教徒にとって最も大切な日であるクリスマスに、その地域では最高のご馳走であるアンコウを食べるようになった、といいます。

一説によると、その宣教師が、旨い旨い、と言って出された碗を瞬く間に平らげ、「アンコール!」と叫んだことから、アンコウの名がついた、という説もある。というのはウソです。クリスマスにアンコウを食べる習慣がある、というのもまったくのデタラメなので信じないように。ちょっとおふざけが過ぎましたが、クリスマスなので許してちょ。

クリスマスイヴの画像

とはいえ、その日その店には我々の他にも予約の客が何組もいて、クリスマスイブにアンコウを食べる人、結構いましたけどね。たまたまでしょうけど。その店は、八丁堀の「篠げん」という、都内で唯一の天然茨城鮟鱇の店。関東では唯一「本アンコウ」が水揚げされる鮟鱇の本場・北茨城で、底引き漁で獲れた天然アンコウを、目利き40年のオーナーが競り落とし、丸一匹を直送。揚がったその日のうちにお店に運ばれ、手早く下処理されるアンコウは、鮮度が違います!とはお店のホームページより。

なにしろ都内で唯一、関東で唯一、と、唯一という言葉が2つもつくぐらいだから、まず間違いはないだろう、と思って予約を入れた。はい。前から知っていた、とか、評判を聞いていた、とかではない。ただインターネットで検索して見つけただけの店である。

ほんとは、「いせ源」へ行きたかったんだけどね。そう、ご存じの方も多いだろうが、神田須田町にある都内唯一(あ、こっちも唯一か)のアンコウ専門店。天保元年(1830年)創業を誇る老舗中の老舗で、下北半島風間沖浦で水揚げされた国産最高級とされる活アンコウを、秘伝の割り下で味わう絶品の「名代あんこう鍋」をぜひご賞味ください。とは、これもネットで拾ってきた宣伝文句で、私もまだ行ったことはない。が、かねてより「アンコウといえば、いせ源」という風聞は耳にしており、いつか行きたい店の1つであった。

しかし、いざ、「いせ源」で予約しようとすると、食べログでもぐるなびでも、その日(当初はクリスマスイブではなく、その2週間前の予定だった)は空席になっているのに、ポチっとクリックしたら、6名以上は電話してください、と出る。そこで店に直接電話すると、その日は満席です、と断られた。恐らく、6名以上は個室に案内するが、個室が埋まっている、ということだろう。

仕方ないので、他をネットで探して、見つけた「篠げん」に電話(ここでもネット予約は不可のようで、直接電話した)して、無事に予約がとれ、ホッとしていたら、直前になって参加者にコロナが出て、延期してほしい、という。

そこで一旦キャンセル。仕切り直して再予約した日が、たまたまクリスマスイブだった、というわけだ。今考えると、一旦キャンセルしたので、再度「いせ源」へアタック、という手もあったが、それは「篠げん」に悪いのでそのときは頭になかった。まあ、「いせ源」はまた今度、人数が少ないときか、予約なしでふらりと行けるときにでも行くことにしよう。

鮟鱇(アンコウ)の画像

で、肝心のお味は?というと、私はたいがいのものは美味しく食べられるバカ舌なので(仮にもグルメ記事を書いているヤツがこんなこと言ってはいかんが)、アンコウのフルコース、大変おいしゅうございました。とくに最初に出た「あん肝」が、ねっとり濃厚で旨かった。さすが、安い居酒屋で出る「あん肝」とはわけが違う、と思った。参加者(あ、言い忘れたけど、いつものアラドラのミーティングと称する飲み会です)の中には結構味にうるさい方が約1名おられるが、その方も「あん肝」だけは絶賛していた。

だけは、というのは、どうやらメインの「どぶ汁」がいまいちだった様子。「どぶ汁」とは、水も酒も使わない昔ながらの無水製法で、つまりアンコウの水分で仕上げる郷土料理。“七つ道具”と呼ばれるアンコウのすべてが入り、あん肝の濃厚な味わいをご堪能いただけます、とのことだが、骨まで入ってちょっと荒っぽいというか、粗野というか(郷土料理とはそういうものだけど)、わずかながらそういう感があって、その方の繊細な舌には合わなかった、とみえる。

それに比べると、「いせ源」は割り下を使うらしいので、もう少し食べやすいかな。食べたことないのでわからないけど。まあ、次回(いつになるかわからないが)、「いせ源」でのアンコウ鍋のリベンジを楽しみにして、今回はこれにて。

なまじクリスマスイブと日にちが限定された回なので、アップするのが遅れると遅筆がバレる(もうバレてるか)といけないと思い、私にしては珍しく早めに書き上げた。その分いつもより文章短めであることをお許しいただきたい。 え?これぐらいでちょうどいいって? そうだよなあ。わかっちゃいるけど、なかなかそうもいかないんだよねえ。まあ、次から気をつけます。ではまた。