唐突ですが、皆さん、ラグビーはお好きですか？ お好きな方であれば、福岡堅樹（ふくおか けんき）選手はご存知ですよね。そう、２０１９年のラグビーワールドカップでの活躍により一挙に全国区のスター選手になった、あの福岡くんです。知らない方でも、ラグビー選手として絶頂期にありながら潔く競技生活を引退し、医師を志して大学の医学部を受験した福岡くんがこの春、晴れて順天堂大学医学部に合格したことが結構話題となりましたから、顔を見れば、ああ、あの人ね、とおわかりいただけるのではないか、と存じます。
じつはその福岡くんも、私や以前このブログで紹介した中村哲さん同じ高校の卒業生なんですね。前々回、中村さんのことを追悼の意を込めて書いた際、さりげなく私の母校の先輩であることも書き添えましたが、そういえば、後輩にも有名なのがいたっけ、と思い出しまして。お二人ともに面識はないけど。
しかも、福岡くんはラグビー選手だから中村さんとは分野が違う、と思っていたら、なんと、これから中村さんと同じく医師になるというじゃないですか。まあ、医師にも色んな道がありますから、中村さんと同じ道を歩むとは限りませんが、医師としての志は同じ高校の先輩・中村医師と同じくらい高く持ってほしい、と思います。ずいぶん上から偉そうなこと言ってすいませんが。
というわけで今回は、私の母校の先輩つながりで恐れ多くも書かせていただいた中村医師に引き続き、今度は後輩つながりで元ラグビー選手、現在は医師を目指して勉強中の福岡堅樹くんの紹介です。ただし、決して後輩自慢ではないですよ。たしかに福岡くんは立派です。ラグビーであれだけ有名になって、いつ現役を引退しても解説者や指導者など引く手あまた、生涯食うに困ることはないだろうに、あっさりその座を捨てるのはなかなかできることじゃない。それでも、どうしても医師になりたい、という初志貫徹に拍手を贈りたい。後輩ながら、尊敬すべき後輩であることは間違いありません。
でも、だからといって、親しい付き合いでもあるならともかく、一度も面識のない後輩を、さも我がことのように自慢するのは、なんだかさもしいですよね。たとえが合っているかはわかりませんが、虎の威を借る狐、もしくは、人の褌で相撲をとる、みたいな。第一、そもそも私、ラグビー部じゃなかったし（バスケットボール部でした）。じゃあ、そんな福岡くんをなんでここで取り上げる？ その名を出して自分の後輩だと言えばもうその時点で自慢している、と思われても仕方がないだろう、と仰る方々に、福岡くんのことを自慢ではなく、他に理由があって取り上げたそのわけをお話する前に、ところで、福岡くんはどこの出身か、ご存知ですか？
答えは、福岡県です。――それがどうした？ という方はどうぞこの先は読まずにご退室ください。へえ～、福岡出身の福岡くんかぁ、出身県と苗字が同じ人って、いるんだなあ、なんてちょっと面白いと思った方はどれぐらいいらっしゃいますかね？ スポーツ界では選手の出身地なんて基本情報の１つですから、試合の実況中なんかに「福岡出身の福岡くん」の福岡重なりをいじるアナウンサーや解説者がいるかと思ったら、そういうのは聞いたことがない。私があんまりラグビーの試合を見ないから知らないだけかもしれないけど。
ともあれ、「福岡出身の福岡くん」をちょっと面白いと思ってくれた方にこっそり教えます。じつは、先ほど申し上げた福岡くん(と私)の母校は、「福岡高校」といいます。通称「ふっこう」。地元ではラグビーの古豪校として知られ、新日鉄釜石の元監督で現日本ラグビーフットボール協会会長の森重隆氏も卒業生です。が、そんなことより、もうお気づきですよね？ なんと、福岡くんは福岡県出身というだけでなく、卒業した高校も福岡高校。名前も出身県名も卒業高名もすべて「福岡」という、嘘みたいな本当の話。たまたま偶然の一致でしょうが、それにしても出来すぎですよねえ。
この嘘みたいな本当の話が、どうも世間ではあまり知られていないようなので、かねてよりみんなに言いたくて、言いたいがためだけに福岡くんを取り上げた、というわけです。いま書いてなんだか胸のつかえがとれたようでホッとしてます。なんだ、話はそれだけか、と思われた方、それだけ、です。がっかりさせたなら申し訳ない。それがどうした？ と言われればそれまでの話で今回は内容が薄くてすまん、すまん。
ちなみに福岡くんの出身大学は、残念ながら福岡大学ではなく、筑波大学です。ラグビーを引退後に入り直したのも順天堂大学ですから、福岡重なりは３つで終わりのようです。もう１つちなみに、福岡大学は、県名と同じ校名なので国公立校と思われている方が多いみたいですが、私立です。福岡県で国公立の大学といえば、九州大学が筆頭で、かの中村哲さんもここのご出身であられます。福岡くんもほんとは九州大学へ行きたかったんじゃないかなあ、と推察しますが、なにしろここの医学部は難関ですからねえ。
ついでに余計なことですが、福岡くんについて書かれたウキペディアには、順天堂大学医学部は非正規合格で、「なお、受験の成績は全然振るわなかったらしく、裏口は間違いないとされている。」という一文があります。これはわざわざ書かなくていいことだし、失礼ですよね。仮に裏口入学だったとしても、いいじゃないですか、ねえ。日本代表クラスの第一線で活躍しながら勉強なんてできないのはしょうがないですよ。その結果としてあれだけの栄光を掴み、有名にもなった人が、その栄光を捨ててまで医師になりたい、と希望したのであれば、叶えてあげるべきでしょうよ。だから私は順天堂大学の英断は支持しますし、それがたとえ裏口であったとしても、今後、福岡くんが医師として歩む道に一片の曇りもない、と信じて、影ながら応援し続けます。会ったこともない後輩だけど、後輩云々は関係なく、１人の人間として。