薄毛あるいは河童禿げ

今年の2月初めに私の母が亡くなった。その葬式のときの話である。式がはじまると、参列者が座る席の最前列に、私の父、私の兄、そして私の3人が並んで座った。故人の家族だから、べつに不自然ではない。まあ当たり前のことですな。その隣に妹もいたはずだが、今回の話には関係ないので除外。問題は、あくまで父、兄、私が3人並んだことにあった。

この3人の後ろ姿を写真に撮って、皆にLINEで送ったヤツがいた。ったく、なんてことしてくれるんだ。まあ私の娘であるが。いや、娘は私の妹に頼まれて撮ったらしく、悪気はないのはわかっている。むしろ離婚した父方の祖母の葬式に、しかも就職が決まるなど色々と忙しい中、わざわざ駆けつけてくれた娘には感謝しかない。離婚はしても親子は親子だなあ。

しかし、である。その娘が撮った写真に、なんということだ、おどろ恐ろしくも身の毛がよだつ、決して見てはいけない、いや、見たくはないものが映っていたのだ。あ、心霊写真とかではないよ。注目すべきは、3人の頭頂部、つまり髪の毛である。な~んだ、またその話かよ、と、ピンときた方もおられるだろうが、もうちょっと気付かないふりしといてね。

過去ブログでも書いたと思うが(いつかは忘れたが)、私の父は若い頃から髪の毛は多い方だった。歳をとって白髪になってからも、白髪なりにフサフサと、年齢のわりには豊かな髪を蓄えていた。この度帰省して久しぶりに会うと、さすがに薄くなったなあ、とは思ったものの、それでも、地肌が透けてみえるほどではない。やはり、もう90歳近い人にしては、白髪でも髪の毛は多い。

これは恐らく遺伝だろう。私が大学生ぐらいの頃に亡くなった父の父、つまり私の祖父も、坊主頭だった記憶しかないが、晩年まで白髪も目立たない青々とした坊主頭で、周囲が感心するほどだった。なので私も、髪の毛はまあ大丈夫、遺伝的にみて薄毛の心配はないだろう、と、たかを括っていた。

薄毛の男性の写真

ところが豈図らんや、私、齢五十をすぎた頃から薄毛、脱毛、スダレ禿げ。これはいかんと、あれこれいじましくも涙ぐましい薄毛対策を講じている。という話は以前もしたし、この後も続くのでひとまず置いて、問題は兄である。兄貴の頭髪である。

私と2歳違いの兄は、兄弟だけど私と顔は似ていない。私が自他ともに認める父親似なのに対し、兄は母に似たようで、兄弟とはわからぬほど顔立ちが違う。しかしこの度、もう十数年ぶりぐらい久々に会った兄は、顔は父に似ずとも髪の毛は父の遺伝なのか、若い頃と同じようにフサフサで、白髪もない黒頭、であった。もうすぐ還暦だというのに。

逆に、顔は父似のくせに、髪の毛は父に似なかった残念な私にとって、これは悔しい。同じ兄弟なのに、何故だ!不公平じゃないか!と腹さえ立つ。そんな私と、白髪だけど年の割に髪の毛は多い父と、私より年長なのに髪の毛は若く黒々とした兄が並ぶと、私の頭の毛の薄さが一目瞭然。もしかしたら式場の照明による光の加減でそう見えるのか、いや、光の加減と思いたいが、私の頭頂部だけ肌が透け、青白く光っているではないか。もはやアルシンド、である。

懐かしいですね、アルシンド。覚えてますか?まだJリーグが創設して間もない頃、たしか鹿島アントラーズの監督になったジーコが連れてきたサッカー選手で、そのサッカーの実力もさることながら、長髪なのに頭頂部は円形禿げ、つまり河童禿げそのものの髪型でも人気を集めた。テレビCMにも出演し、「トモダチナラアタリマエ」というセリフも印象に残っている。どういう意味かは忘れたけど。

そのアルシンドの河童禿げを彷彿とさせるほど薄い私の頭頂部が、白髪頭の父と、黒々頭の兄と並ぶことで、さらに禿げが引き立ち、目立っている。うーん、これはもう薄毛を通り越し、スダレでもなく、立派なアルシンド、もとい、河童禿げではないか。そう認めざるをえない。いや、写真を見て私、愕然としましたね。

それにしても、何故、兄の頭は黒々フサフサなのか?兄弟なのに、ずるいではないか。腹立ちまぎれに兄に聞いたところ、口を濁してなかなか教えてくれない。それでもしつこく食い下がるまでもなく、横で聞いていた義姉があっさりバラしてくれた。「ニューモよ」と。

明治薬品株式会社製ニューモの画像

おお、「ニューモ」かあ。ネットをよく見る人なら大々的に宣伝していたのでご存じだろう。テレビCMもやってたかな?とにかく近年最も売れた(かは定かではないが)育毛剤。いや、発毛剤?まあどっちでもいいが、使ってよかった、という体験者を続々と登場させ、その体験者たちがいずれも髪フサフサで、あたかも、薄毛に悩む人の救世主、それが「ニューモ」。といった扱いであった。

もちろん私も、飛びつきはしなかったが、相当惹かれた。とくに、つくりすぎたとかで半額キャンペーンを張ったときは、すぐさまポチっと、いく寸前だった。が、そのタイミングで折よく、なのか、間が悪く、なのかわからないが、とある知人から、「ニューモは全然効かない」と聞いたので、そのときは思いとどまった。という経緯がある。

その「ニューモ」が、兄には効いた、という。本当か?と、意気込んで兄に真偽を問う私。それでも、兄は秘密にしておきたかったらしく、うん、まあ、と、依然言葉を濁してはっきりと答えない。もともと口数は少ない兄である。ましてや、兄弟仲は悪くはないが良くもなく、久しぶりに会っても必要最低限の会話しかしない間柄なので、それ以上の追求は諦めた。まあ、「ニューモ」がわかっただけで良し、としよう。

と、思ったら、私の必死さが少しは伝わったらしい兄が去り際に一言だけ、ボソッとこう言い残した。「たくさんつけんと、効かんぞ」。ということは、たくさんつければ、効くんじゃん、といいように解釈するのは、藁にもすがりたい者(私のことです)にとってはむべもない。兄に効いたなら、弟の私にも効くに違いない、と。

そこで早速、「ニューモ」を注文。はしなかった。なぜなら、そのときはすでに半額キャンペーンは終了していたから。いやいや、藁にもすがりたいなら、半額じゃなくても買えよ、と思いますよねえ。もはやケチってる場合じゃないだろう、って。しかし、そのとき、私はこうも考えた。「ニューモ」は最後の手段にとっておこう、と。

その代わりに、とあるメーカーの「スカルプエッセンス」なるものを買った。日本語でいえば「育毛頭皮エッセンス」とあるから、「ニューモ」なんかよりは弱そうだけど、まずはこれから。というのも、じつはそれ以前から、そのメーカーのシャンプーを使っており、シャンプーと同じメーカーの育毛剤から先に試そう、と思ったのだ。

100%天然由来と謳い、シリコンやカチオンなど髪に良くないとされる10の成分が無添加。スタッフが熱意と信念を持って商品化したというそのシャンプーは、それまでずっと使っていた安売りシャンプーが切れ、次は何を使おうか、と探していたタイミングでたまたま見つけた。

天然由来のイメージ画像

これは健康食品なんかでよくある、定期コースに申し込めば勝手に送られてくるやつで、最初の1本だけ安くて、2本目以降は通常価格という、よくある手にまんまと引っかかったわけだが、その通常価格が1本4070円税込み。高いよね。それまでずっと安売りのシャンプーを使っていた(その経緯も過去ブログで書いた)私には明らかに不相応な買い物だが、いつ止めてもいいし、送付間隔も自由にできるというので、合わなきゃすぐ止めればいいや、と思って試したら、意外にも結構気に入って、使い続けている。

ただし、その効果はといえば、例の写真を見る限り、効果なし。でもまあ、天然由来と無添加を信じ、シャンプーに加えて育毛頭皮エッセンス。「ニューモ」の前にこれでしばらく様子をみることにした。が、またまた悲劇は訪れる。

葬式から約2カ月ほど経過した3月末に花見をした。その話も過去ブログに書いたが、今年は例年より桜の開花が遅かった。それでも、何を焦ったのか、開花する前に無理やり決行した花見の当日は、見事に1輪も咲いてなく、ただ外で飲み食いしただけ。その花も咲かない花見の様子を、これまた写真に撮って、LINEで皆に送ったヤツがいた。ったく、余計なことをしてくれるなあ。と思ったのはもちろん私だけだが、もう言わなくてもわかりますね。そこに映っていた私の頭頂部が、またもやアルシンド。もとい、河童禿げと言われてもしょうがないほど白々と光っている。あな恐ろしや。

これはつまり、天然由来・無添加シャンプーも、育毛頭皮エッセンスも、効いていない。ということである。なんたる悲劇。そればかりではない。私は過去ブログで、プロテインが髪に良い、ということを発見した、と、意気揚々と書いた。もしかしたら決定打になりえるかも、とか、ついに最終手段を見つけてしまった、とか、そういう意味のことをかなり大袈裟に書き立てた。断言まではしなかった、と思うが。

それから私は毎日、プロテインを飲みました。少なくとも1日1杯、多い時は2、3杯、アーモンドミルクに混ぜて飲みました。プロテインは高いけどなるべく安いものを探して、アーモンドミルクも高いけどしょうがないと割り切って、飲みました。あ、アーモンドミルクは目に良い、と聞いたので。

プロテインと大豆の写真

途中、痛風が出て右手が割れ上がったときも、どうやら大豆が痛風に悪いようなので、大豆由来のプロテインを止め、さらに高価なホエイ・プロテインに代えて、飲み続けました。貧乏人には痛い出費ながらなんとか、かれこれ半年は飲み続けたかな。

その結果がどうだ。葬式のときも、花見のときも、写真を見るかぎり、全然効果が出ていないではないか。むしろ後退、まである。なんというザマ。ここに至って、前言撤回致します。プロテインを飲んでも髪は生えません。もし、私を信じてプロテインを飲んでる方がいらっしゃいましたら、平に陳謝致します。申し訳ございませんでした。

というわけで、やっぱり「ニューモ」しかないのかな。と思い始めていた私のもとに、今度は幸運が舞い込んだ。なんと、以前、「ニューモは効かない」と私に仰られた方が、使わないからあげるよ、と、「ニューモ」をくれたではないか。しかも3本も。これはありがたい。「ニューモ」も高いからね。

そして「ニューモ」の日々がはじまった。兄の言う通り、たっぷりと、1日数回、寝癖直しの整髪料のごとく。もしこれが自腹で買った「ニューモ」だったら、こんなにじゃぶじゃぶと使えなかっただろう。なにせ貧乏人だからね。高価な「ニューモ」はチビチビと、大事に大事に使うしかない。しかし、タダでも貰った「ニューロ」であれば、これはもう、ケチケチせずに、大胆に使える。

かくして、思わぬ僥倖によりはじまった「ニューモ」の日々は疾風の如く、3本もらった「ニューモ」をあっという間に使い切った現在の私の頭が、以下である。うーむ、あんまり変わってないかな?私的には、さすが「ニューモ」、たしかに髪の毛は増えた、という実感があるんだけど、写真ではわからないかな?

よくよく見れば、もとからある髪の毛は伸びてはいるが、新しく生えてくる髪の毛がない。つまり髪の本数は増えていない。従って、「ニューモ」の効果は、どちらともいえない、といったところか。しかし、まだ「ニューモ」の日々ははじまったばかりである。というのは、3本目の「ニューモ」が無くなりかけたタイミングで、また3本、「ニューモ」を貰った。うれしいなあ。少なくともこの3本を使い切ってから、改めて、「ニューモ」の効果を検証したい。

ちなみにプロテインは、よほど止めようか、と思ったが、じつはまだ飲み続けている。その後、つまり最近だが、コラーゲン入りのプロテインを見つけたので。これ、多分女性用だと思うけど、コラーゲンは髪に良いというからね。大豆由来だけど、飲み過ぎなければいいでしょう。

さらに、このコラーゲン入りのプロテインに、ゼラチンも混ぜている。ゼリーとかをつくるときの、あのゼラチンね。これが安くて頭髪に効果抜群!と、YOUTUBEでやっていた。が、お勧めはしない。プロテインで懲りたから。ゼラチンはあくまで私個人の信心によるものだから、マネしないように。

もう1つ、頭髪のために最近はじめたことがある。はじめた、というより、止めた、というべきか。それは、バスタオルである。それまでは、風呂上りに体を拭いたバスタオルはそのまま乾かし、洗わずに繰り返し使っていた。これが髪の毛に相当悪い、と、これはYOUTUBEではなく、テレビか何かを観て知り、バスタオルは毎回必ず洗濯するようにした。これがどう頭髪に影響するか?は、なにせ「ニューモ」と同時進行なので、分析が難しい。しかし、悪くはない、のは間違いないだろう。

と、まあ、とにかく、あの手この手の薄毛対策。この話をする度に、我ながらいじましくも情けないが、しょうがない。当面の目標は、理髪店に散髪に行くことだ。というのは、ここ数年、髪が伸びないから床屋に行く必要がなく、横に伸びた髪はセルフカットで十分なので、もう3~4年、もしかしたらそれ以上、床屋へ行ってない。それで思い出したが、兄は葬式がはじまる前、時間があったので式場の近くの床屋へ髪を切りに行っていた。くそう、悔しいなあ。私も早く、床屋へ行けるぐらい髪を増やしたいなあ。というわけで、私のいじましくも涙ぐましい薄毛対策はまだまだ続く。