前回ブログで、バイト以外のほぼすべての時間を店に詰めているから、自分のための買いものやなんかの時間がないし、引っ越しして半年近く経つのにいまだに部屋の片付けができない(のは言い訳だけど)、という話をした。が、じつはその後しばらくして、とある理由により、そこまでキチキチに、プライベートの時間がまったくないほど店に詰めることは、しなくなった。つまりそれ以前に比べて若干、体力的にも精神的にもかなり、余裕が出てきた。それが現在の状況である。
では、その、とある理由とは何か?これについては説明し出すと長くなるので簡潔にまとめたいけど、結構ややこしい話なので、長くなったらごめんなさい。そもそも何故、店にいてもほとんど役立たずの私がそこまで一生懸命店に詰めていたかというと、それはデリバリーの配達のためである。ウーバーイーツとか、出前館とか、その他諸々ね。
でも、そういうのは、ウーバーならウーバーの配達員が、出前館なら出前館の配達員が、配達してくれるんじゃないの?とお思いでしょうが、じつは場合によっては、店のスタッフが配達することもあるんですよね。出前館やウーバーに配達してもらわずとも、店舗スタッフで配達できる店なら、出前館やウーバーに配達料をとられるよりは、店舗スタッフで配達した方が、実入りが良いからね。
で、ここからが業界内の話でややこしくなるのだが、ウーバーイーツは、配達員が配達するか、店舗スタッフが配達するか、を、その都度切り替えることができる。これが大変便利。ある程度は店舗スタッフが配達できても、人が足りないなどで配達できないときもあり、すべての配達はできない店、というのは結構多いと思うが、そういう店にとっては、配達できるときだけ配達して、できないときはウーバーの配達員にお願いする、ということが可能なのは、じつにありがたいシステムである。店をやってみればわかる。さすがウーバーイーツといえる。
ところが、だ。残念ながら出前館は、その切り替えがその都度できない。これが大変困る。出前館の注文を店舗スタッフで配達しようとすると、前もって出前館の本部にわざわざ申請して切り替えてもらわないといけなくて、それだけで時間がかかる(長ければ1月ほども!)。なので注文が入ったその都度はもちろんのこと、日によって切り替えることもできない。それでも切り替えたら切り替えたらで、その後はずーっと店舗スタッフが配達せねばならず、今日は店舗スタッフが配達できないから、出前館の配達員にお願いする、というのは不可なのだ。
だったら切り替えなんかせず、すべて出前館に任せればよさそうなもんだけど、ウチの店の場合はやむをえない事情があった。以前も話したと思うが、ウチの店の配達圏内に出前館の配達員が少ないのかいないのか知らないけど、出前館の配達にしていると、しばしば「配達員がいないので注文の受付を停止しています」となる。ひどいときには一日中停止している。言うまでもなく、停止中は売上ゼロだ。
そこでやむをえず、店舗スタッフによる配達に切り替え、私が自ら配達するようになったたわけだが、それはそれで問題が発生。私は別に仕事があるから毎日は店にいないので、私が店にいない日はアルバイトの配達員を雇って配達させたものの、タイミーとかシェアフルとかで応募してくるバイトが揃いも揃って使えない。注文はたしかに切り替えた途端よく入ってきたけど、それと呼応して、「遅い」「時間がかかりすぎる」「態度が悪い」といったクチコミが出前館のサイトにズラズラッと書かれた。という話は以前もしたっけ。
まあ、100%バイトのせい、というわけでもないけどね。私もフードデリバリーの仕事はバイクの運転も含めてまったくの未経験だったうえに、土地勘もゼロからはじめたので、最初は失敗もした。すっかり慣れた今では考えられない恥ずかしい失敗もあった。また、そのときいたインド人シェフ(今はもういない。体を壊したといって辞めた)が、セットで付けるべきものを付け忘れ、というチョンボをやらかし、それもクチコミに書かれた。そんなあれこれの失敗がいくつも重なった。要するに、急にドンドン注文が入りだすと、店としてそれに対応することができなかった、ということだ。色んな意味で。
そして、恐らく、というよりほぼ間違いなく、そうしたクチコミのせいで、注文がピタッと止まった。それはもう見事に、あれほど鳴っていた「出前館です♪」(注文が入った合図ね)が、パタリと鳴りを潜めた。注文が入らなければ、バイトは雇えない。バイトには配達しなくても時給を払わないといけないから。
かくして、バイトを雇うのを止めたら、店で配達できる人間は私ひとり。なのでしょうがなく、私が店にいるときに注文が入れば、オンボロバイク、というかスクーターを駆って、配達に行く。一時期ピタッと止まった注文も、しばらくすればポツポツと入るようになった。しかし逆にいえば、私1人でもこなせるぐらいの注文しか入らない。だいたい1日1件か2件、多い日でも4件か5件、ひどいことに1日0件の日もあった。
そんな日はガッカリ肩を落とし、帰りに東急ストアで買った半額の総菜をつまみにヤケ酒を飲む。まあ缶ビールか缶酎ハイぐらいだが。バイクの運転のため夜勤明けの1杯も、店で味見と言い訳しつつ盗み呑む生ビールも控えているから、呑むのは帰宅後。相変わらず片付かない段ボールに囲まれて飲むヤケ酒の量が次第に増えていく。
やがて1件も注文が入らない日の方が多くなってきた。それは多分、私が店に毎日はいないため、注文受付を停止している日があるから、だろう。やはり毎日、店が営業している限りは営業時間中ずっと注文を受け付けてないと、注文は増えないどころか減っていく、らしい。
また私も私で、さすがに体力的にきつくなり、ちょくちょく遅刻したり、サボったりするようになった、というのも1因だろう。店に行っても注文が入らないと、モチベーションも下がり、どうせ注文入らないから、ちょっとぐらい遅れてもいいだろう、てな具合に。これでも私、一応経営者であり社長だから、私がサボっても怒る人がいない、というのがマズいよねえ。
そうやって、私が店にいるべき時間なのにいないことが増えると、せっかく入った注文なのにキャンセルせざるをえない、という事態も多くなってきた。私以外に配達に行ける人間がいないからね。そうやって注文のキャンセルが続くと、またクチコミに、「いつ注文してもキャンセルされる」「やる気あるの?」などと書かれ、ますます注文が減るという悪循環。
これではいかん、と辛抱堪らず、とうとう店舗スタッフ(つまり私)による配達は諦め、再度、出前館による配達に切り替えた。それが冒頭に述べた、私が体力的にも精神的にも余裕が出てきた、といった理由である。かれこれ1カ月半ぐらい前になるかな。注文が多すぎて配達を止めたのではなく、あまりに少なすぎて止めた、というのが情けない話ではあるが。
そうして出前館による配達に切り替えたら、やはり、またしても、「配達員がいないので受付を停止しています」だって。ふざけんな。一体どうすりゃいいんだ、と、怒ってみても、出前館の本部に苦情の電話をかけても、相手にされず、「現在配達員を募集中なのでお待ちください」の一点ばり。ほんとに募集してんのか?ったく。
一方のウーバーイーツはどうかというと、こちらはこちらで、ずーっと低空飛行。開始直後から現在に至るまで、平均して1日1件か2件ほどのペースが続いている。だから出前館の配達を止めてもウーバーの配達はあるのだが、前述したようにウーバーはウーバーによる配達か店舗スタッフによる配達かをその都度切り替えることができるから、精神的にかなりラク。私がいなきゃウーバーに配達してもらえばいいんだから、店にいないといけない、というプレッシャーからはほぼ解消された。
まあウーバーに頼めば配達料をとられるから、それがもったないといえばもったいないけどね。それでも、1日に1件か2件あるかないかの注文のために1日中店に詰めているのは割に合わないから、配達料をとられても頼みたいときに頼める、というのは助かる。だからほんとは出前館よりもウーバーの注文の方が増えてくれればいいのだが、そうは問屋が卸さない。ウーバーイーツだってはじめてもう半年以上経つというのに、一向に注文数が上がってこない。半年経ってもダメなら、そもそもこの近辺にデリバリーの需要はない、ということか?
そもそも、我が店「Mr.Spice」を東急大井町線「戸越公園」駅から徒歩約3分、戸越公園南口商店街のこの地でオープンしよう、と決めた理由の1つは、「この近辺ならデリバリーは確実にいける」という読みがあったから、だ。デリバリーの経験豊富なスリランカ人の店長がそう言ったから、この地を選んだのに、何たるザマか。
とくにひどい出前館はおいとくとしても、ウーバーイーツにしても大きく期待外れ、そして他にも「ウォルト」や「メニュー」、近々では配達料0円を謳って大々的に宣伝している「ロケットナウ」もやっているが、軒並みダメ。1日1件でも注文入ればまだいいが、ウォルトもメニューもロケットナウも、揃いもそろって、1週間に1件ぐらい、ポツリポツリとしか注文が入らない。まったく、話にもなりませんぜ。
結局のところ、我が店の赤字のほとんどは、このデリバリーの当てが外れた、はっきり言えば、失敗した、のが要因である、といっても過言ではない、と私は思っている。もちろんデリバリーだけで稼ぐつもりではなかったが、デリバリーである程度の売り上げの補填はできる、とは踏んでいただけに、これほど予想を大きく超えてデリバリーの売り上げが低ければ、赤字も赤字なのは当然といえば当然である。やれやれ、どうしますかねえ。
などとデリバリーに対する恨みつらみを述べつつ、今回の原稿はここで終了。ちょっと唐突な感じがしないでもないけど、一旦締めます。というのは、ほんとは前回ブログで書いた状況からその後少し変化があり、体力的にも精神的にも余裕が出てきたので、それまで控えていた夜勤明けの1杯を再開した、という話を書くつもりで、その前置きとして、余裕が出てきた理由を述べたらまた長くなった。前置きが長いのはいつものことであるのだが、今回はあまりに長くなり過ぎて、ここから本題、となるともう読んでもらえないだろう、と思い、今回書くつもりだった本題は次回にまわそう、と、そういう次第であります。では次回、夜勤明けの1杯の話をお楽しみに。