終戦記念日と戦争の記憶

8月15日・終戦記念日

本日8月15日は、終戦記念日。終戦というと聞こえがいいけど、まあ、実際は敗戦ですな。その9日前の8月6日に広島に原爆が落とされ、続いて8月9日には長崎に原爆投下。そして8月11日は私の誕生日。って、すいません、冗談です。終戦や原爆と私の誕生日は何も関係ない。ただ、たまたま日が近いから言ってみただけ。あ、私の誕生日を皆さんに知ってほしい、とかもないです。もう誕生日が嬉しい歳でもないからね。むしろ誕生日が来るたびに、やれやれ、またひとつ歳をとったなあ、と、虚しくなる今日この頃。

などとしょうもない話は置いといて、毎年この時期になると、テレビ番組等でよく戦争関連の特集をやっている。戦争の悲惨さを訴え、二度と戦争を起こしてはいけない、という、いわば反戦教育を、手を変え品を変え、という言い方は軽々しくていかんな、色んな角度から見つめ直し、あるいは検証し直し、ときには隠蔽された事実をつまびらかにしたりしつつ、戦争というものの本質を浮き彫りにする。

とくに今夏は、例年以上にその数が多いように感じる。また、例年以上に力が入っているなあ、とも感じるその理由は、やはりロシアのウクライナ侵攻があった(現在進行形だが)から、だろう。それまでは長らく、日本人にとって戦争とは、どこかの遠い国の話であった。戦争はニュースで見るものであって、身近なものではなかった。それを一変させたのがプーチンである。今回のロシアのウクライナ侵攻により、日本人の誰もが、戦争は遠い国の話ではない、今の世の中でも現実に起こり得るものだ、と、思い知らされた。なにしろロシアは日本の隣国、だからねえ。

その衝撃は、恐らく2001年の世界同時多発テロ、いわゆる「9・11」以来ではないか、と私は思う。このときも、世界は一瞬できな臭い空気に覆われた。というのも私、この年を含めた前後6~7年ぐらいの間、今となっては信じられないが、毎年のように海外旅行に行っていて、今よりは、なんというか、インターナショナルな感覚(というほど大げさなものではないけど)があったから。

子供が生まれる前には、(今は別れた)妻と一緒にドミニカ(海外青年協力隊の友人がいたため)やイタリアへ行ったし、2002年に子供が生まれてからも、香港やマカオ、バリ、マレーシア(当時はほとんど東南アジアだった)などへ、わざわざ幼子を抱えて行ったものだ。当時は乳幼児は飛行機代(いや、ツアー代だったかな?)が無料だったので、今のうちだ、と思って。

ニューヨークへもたしかその年の正月に行っている。このときは子供が生まれる前だったが、ニューヨークの前にサンフランシスコで1泊、ニューヨークで2泊、それからマイアミへ行き、キーウエストへ、という予定だった。ところが、サンフランシスコで雪のため飛行機が飛ばずに足止めをくらい、ニューヨークへ着いたのは1日遅れの深夜。空港から地下鉄に乗ってマンハッタンまで行き、駅から地上へ出るやいなや、新年のカウントダウンがはじまった。コロナ以前はテレビでよく見た、あの光景である。

このとき泊まったホテルは、奮発してヒルトン。よく覚えていないが多分、マンハッタンのほぼ中心、タイムススクエアからも近い場所にあり、その辺りはカウントダウンで浮かれてヒューヒューと陽気に騒ぐ人々でごった返していた。そんな中、群衆をかきわけかきわけ、重いトランクをゴロゴロ引きずって歩いたのを覚えている。そしてようやくホテルに辿り着き、深夜にチェックインし、その日の朝にはチェックアウト。つまりわずか8~9時間ほどのホテル滞在であった。せっかくのヒルトンなのに、ねえ。

チェックアウトしたら、その日のうちにマイアミ行きの飛行機に乗った(ツアーだから飛行機の時間は決まっている)ので、ニューヨークを観光する時間はほぼなかった。それでも、自由の女神があるリバティ島行きの船の発着場までは行った記憶はある(結局船には乗らなかったが)。そこから例の世界貿易センタービルまでは、近いよね?

ニューヨーク・ワールドトレードセンタービルの画像

だから「9・11」が起こった当時、何度も繰り返し放送された、世界貿易センタービルに飛行機が突っ込んだ瞬間のあの映像を見るたび、思ったものだ。おお、あそこの近くまで行ったことあるぞ、オレ、と。いや、まあ、あのビルの中に入ったことがある、とか、そこで働いていた、とか、世界貿易センターに縁がある人や思い入れが深い人は少なからずいらっしゃるわけで、そういう方々と比べると、ただ近くに行ったことがある、なんてのはいかにもショボい話である。ましてや、あの事件で身内や知り合いを亡くされた方の前では恥ずかしくてできないほどつまんない話をしている場合ではなかった。

話を終戦記念日に戻すが、毎年毎年、この季節になるとさまざまな内容で放映される戦争の特集番組を、例年はさほど熱心には見てはいない私であるが、今年に限っては、わりとよく見た。といっても、自宅ではあんまり見ない。そもそも自宅でテレビを見る時間は少ないから(最近はYoutubeばっかり見ている)。では、どこで見ていたか。当ブログをよく読んでおられる方ならおわかりですね。そう、介護施設での夜勤中である。勤務中にテレビが見られるなんて、良い職場だなあ。いや、これはさすがに見つかると怒られそうなので、ここだけの話にしといてね。

夜勤の仕事は、利用者の就寝時と起床時が大変で、この時間帯はもう、前にも言ったが息つく間もなくバタバタ、クルクルと働いて、いつも汗ビッショリになるので着替えを持参しているほど。だけど、夜、利用者一人一人を部屋に連れてゆき、オムツを代えて、寝かしつけて、全員が寝れば(寝てくれれば)、あとはゆっくり、自分の時間。記録をつけたり、翌日の毎食後の薬をセットしたり、21時・0時・3時・6時に各居室を巡回して安否確認、そして朝食の準備など夜間にやるべきことは結構あるにせよ、慣れればさほど時間もかからず、自分の時間はたっぷりとれる。その時間を使って、仮眠するもよし、テレビを見るもよし、原稿を書くもよし(って、そんなことしてるのは私だけか)。

ただし、それは利用者が静かに寝てくれれば、の話である。車椅子の人は、自分でトイレに行けないから、起き上がればセンサーが鳴るようになっているのだが、これがひどい日には何度も鳴る。キンコンカンコン(居室によってメロディは変えているが)鳴りっぱなしのときもあり、その度に居室に行ってオムツや濡れたシーツを換えなければならず、ゆっくり休憩する間もない日が、何度もあった。

広島の原爆ドームの画像

でも、まあ、最近はわりと落ち着いているので、こうしてテレビも見てられるわけだが、戦争の特集番組といえば、やっぱりNHKですな。そもそも戦争特集の数が民放に比べて多い、とうのもあるけど、その内容といい、構成といい、抜群にクオリティが高い、と思う。とくに、当時の様子を記録した映像や写真が、素晴らしい、という言い方は変か。何というか、大変貴重だと思われる資料(映像や写真、文献等)がふんだんに、効果的に使われているから、見応えがある。

加えて、最新技術もどんどん導入されているようで、つい先日見た、ミッドウェー海戦を扱った番組では、なんと、空母「赤城」の船内を、多分CGだと思うけど、映像で再現。しかも、被弾した瞬間の様子を、何故わかるの? と不思議に思うほどリアルに映像化しており、その臨場感たるや、圧巻であった。

いや~、いつもNHKの受信料が高くて腹が立っていたけど、こういうのを見れば、まあ、しょうがないか、と思いますね。NHKから国民を救う党(という名称で合ってるかな?)が、すべての国民はNHK受信料を払う必要はありません。とか言ってたのを間に受けなくてよかった。

あともう1つ、そうした戦争番組を見ていて感心するのは、当時の様子を語っておられる証言者がよく登場するが、皆さん90歳を超えておられるのにお元気で、当時の記憶もたしかで、よくこういう方々を見つけてきたなあ、と思う。戦後77年、こうした戦時中の記憶を語れる方はどんどん減ってきているのは言わずもがな。その貴重な話を記録するというのは、大変有意義な仕事である。私もせっかくメディア(の末端も末端だけど)に関わっていたんだから、こういう仕事をしたかったなあ、と思うが、もう遅いか。

ちなみに、現在は介護施設で働いているわけだから、利用者の中に戦争の記憶がある人はいないか、と思ってちょっとだけ聞いて回ったことがあるが、ここはダメでしたね。私の働いている施設は、グループホームといい、主に認知症患者を対象としている。だから90過ぎの方々は軒並み認知症で、戦争の記憶どころか、自分の記憶さえない。

長崎の平和祈念像の画像

唯一、93歳で認知症ではないお婆ちゃん(以前登場した氷川きよしファンのお婆ちゃんね)は、田舎の出身で空襲もなかったそうで、さほど語るべき記憶はない様子。もう1人、2階のフロアに94~5歳の認知症ではない男性がいるが、この方に聞いたら、「私は戦争に行ってない」の一言で終わった。まあ、この方は食事の時間以外は自分の居室に引き込もっていて(ほとんどの時間塗り絵をしている)、コミュニケーションがとりずらい人だからしょうがない。

他に認知症ではなく話ができる人はいても、まだ若くて(80前半はまだ若い)、戦争で身内が死んだ、という人もいたが、それ以上の話は出てこなかった。やはり、戦争の記憶を語れる人は少ないのだ。そして、そういう希少な方々を多く番組に登場させているNHKは偉大である。というか、NHKだからできること、なのかもしれない。

と、NHKを持ち上げといてなんだけど、では、その番組名は? と聞かれても、覚えていない。また、見た、といいつつ、その内容をすべてちゃんと見たわけではない。あくまで勤務中だからね。それに原稿も書かなきゃいけない(自分の仕事だけど)から、最初から最後まで全部じっくり見ることはできない(当たり前か)。従って、断片的に所々見ただけの番組について書くのは、無理がある。ここまで書いといてなんだけど。それに文字数もそろそろ一杯一杯(というか、もうすでに多すぎ?)、ということで、今回はこれにて。8月15日の話なので、ギリギリだけど8月15日中にアップが間に合ってよかった。