台風と認知症

台風と認知症

自転車並みのスピード、だそうである。いま関東に接近中の、過去に例をみないほどの大型だという台風14号のことね。それにしても、自転車並み、って、どんだけ遅いんだ? 昨夜、いや、一昨夜から、今度の台風はずいぶんゆっくりだなあ、とは思っていたが、そこまで遅いとは。もしかしたら大きさだけでなく、移動スピードも過去に例をみないほどの遅さじゃね? あ、申し遅れたけど、例によって夜勤中にこの原稿を書いていて、現在、深夜の1時半頃。この時点で台風はようやく能登半島に差し掛かったぐらいである。

うーん、夜勤が明けて帰宅の途につく午前10時には、台風は過ぎ去っているだろう、と勝手に予想していたが、このペースだと、10時でもまだ暴風雨が吹き荒れているかも。そうなったらいやだなあ。いや、台風情報をみていると、当初の予想よりもかなり日本海側を進んでいるから、もしかしたら東京はさほど影響ないかもしれぬ。まあ、こればっかりは自分ではどうすることもできないし、ジタバタしてもしょうがない。慌てず騒がず、台風一過を待ちましょう。どうでもいいけど、子供の頃、台風一過、という言葉を聞くたび、台風一家、という文字が頭に思い浮かんだものだ。そりゃ私だけ?

などど相も変わらずくだらないことを書き垂れているうち、時刻ははや2時過ぎ。前回に引き続き、ほぼリアルタイムで書いているが、じつはこの原稿にとりかかる前に、数少ないライター仕事の1つである、飲食店の取材原稿を1本仕上げて、夜中だけど送信もした。おまけにこの日は、いつものメールチェックに加え、ネットバンキングによる振込やマイナンバーカードの申請など、細々した用事も済ませた。それにしても、夜勤中に別の仕事をどんだけやってるんだ、って話だよねえ。

いや、介護の仕事もやることはちゃんとやってますよ。21時に各居室を巡回して安否確認、その後取材原稿を書いて、0時になったら記録(その日の排泄回数や摂取水分量などを全員分タブレットに入力し、手書きで記帳もする)と2回目の安否確認をしつつ、自分ではトイレに行けない車椅子の人のオムツを交換する。

認知症の老人と車イスの写真

それがこの日は大変でねえ。まず、いつもは夜中にしょっちゅう起き上がって(居室のセンサーが鳴って)、その度に居室へ駆けつけなければならない、人一倍、いや、人の3倍ぐらい手が掛かる困った婆さんが、今日は珍しく一度も起き上がらなくて、助かったなあ、おかげで原稿が書けたなあ、と思っていたら、安否確認で様子を伺うと、変な姿勢で寝ている。電気をつけると、その婆さんの居室にだけ置いてあるポータブルトイレに排尿しており、濡れたパットを自分でとってそのへんに放り出していた。なぜかセンサーは鳴らなかった。

そのままにしておくわけにはいかないので、寝ている婆さんを無理やり起こし、立たせてオムツをパットと取り替え、ポータブルトイレの尿を捨てて洗って元に戻す。ラバーシーツ(おねしょ用に敷く水分を通さないシーツ)とパジャマのズボンは濡れてなかったのがせめてもの救いである。

続いて、寝たきりの婆さんのパットを交換。これは尿失少量で大事には至らず。しかしその次の婆さんが大惨事だった。この婆さんはほぼ会話不能の重度の認知症で、寝ているときにオムツの中に手を突っ込むクセがある。だから朝起きると手が便まみれになっていることもしばしば、だけど、その手を洗おうとすると、水が冷たい、と言って嫌がる。クソまみれの手なんて汚いし、それを洗うのがイヤなんて腹が立つし、この間なんか、私がその婆さんを抱え上げてベッドに移そうとしたとき、私の汗が手について、ベチャベチャだ、と言いじつにイヤそうな顔をした。これには思わず、カッ!となりましたね。

だって、自分のクソが手についても平気なくせに、私の汗が手につくとイヤ、ってことは、自分のクソよりも私の汗の方が汚い、と言ってるようなもんじゃないか。一生懸命お世話しているのに、しかも、その婆さんは太っていて重いから余計汗をかくのに、その言い草はなんだ、と腹が立ってしょうがない。けど、皆さん、これが認知症というものですよ。介護現場のリアルですよ。やれやれ。

話を戻すが、この日、その婆さんの居室へ行き、眠っているのも構わずズボンを脱がし、パットを確認すると、やっぱりオムツの中に手を突っ込んだ形跡があり、テープ式の中に装着した大パットも小パットも外れて用をなさず、尿が漏れ出してラバーシーツに広がっていた。あ、テープ式というのはテープで止めるタイプのオムツのこと。大パットや小パットは―――説明はいいか。わかる人にはわかるし、わからなければ聞いてください。

認知症介護の写真

で、やれやれ、と思いつつ、テープ式も大小パットもズボン(この婆さんはパジャマには着替えずズボンのまま寝せている。なぜかはわからないが)もすべて脱がし、ラバーシーツも引っ剥がして、新しいのに交換。このとき、婆さんは寝たままで、ゴロンゴロンと体の向きを変えながら脱がせたり着せたりするわけだが、重度の認知症だけに、着脱しやすいよう自分で体勢を変えるなどの協力を一切しない。寝ていても起きていても、自分では一切動くことなく、ただドテッと太った重い体を投げ出したまま。まるで死体である。いや、最近は足をグニャッっと変なふうに曲げるという、また困ったクセが新たに加わったから、死体よりも始末が悪い。と、文句を言ってもしょうがないので、またしても汗をかきかき、オムツやシーツを交換する。就寝(利用者を居室誘導して寝かせる)時に大汗かき、起床(利用者起こしてフロア兼食堂に誘導する)時にも大汗かき、さらに深夜のオムツ交換でも汗かいて、着替えが何枚あっても足りゃしねえ。

さらにこの日は、その次、つまり4人目にパット交換した婆さんも、これまた大惨事。であったが、いかんいかん、ここまで書いているうちにもう3時。3回目の安否確認をしなきゃいけないし、その後は朝食の準備もしないといけない。ということで、原稿はここで一旦中断。続きは夜勤明けに、どこかで一杯飲りながら書こう。なにしろリアルタイムの原稿だから、ね。あ、台風は現在、新潟を通過中。東京は今のところ雨は降ってない。よしよし、このまま台風一家、違った、台風一過となりますように。

はい、夜勤明けて現在昼の12時頃、大森駅前の24時間営業の居酒屋で原稿の続きを書いている。いや、書こうと思ったけど、急遽、今回はここまでにして、とりあえずアップして終わりとします。尻切れトンボの中途半端で申し訳ない。理由はパソコンの不具合である。前々から不調だったのを騙しだまし使ってきたが、ここへ来てとうとう、というか、いよいよダメになった。どういうふうにダメなのか、を説明する間もなくシャットダウンしてしまいそうなので、説明は次回で。今回の話の続きも次回で。あと、前回でトリプルワーカーを返上してクワトロワーカーになった、という話をしたが、その話の続きも今回できなかったので、それも次回で。ああ、もう落ちるぅぅ(パソコンが)……