先日、競馬場へ行ってきました。毎月恒例のアラドラ(当ブログの掲載元でもある一般財団法人ね)のミーティング(と称するただの飲み会)で、いつもただ飲むだけでは飽きるのでたまには趣向を変えて、お馬さんでも眺めながら飲みましょう、ということで。季節もいい頃合だし、競馬場のスタンドで涼しい風に吹かれながら飲む生ビールは最高でした。
それにしても、競馬場へ行ったのなんて何年ぶりだろう。少なくとも上京してからは一度も行ったことはないので、はや30年、いや、もっとか。うーん、月日は百代の過客にして過ぎ去りし日々は一瞬の幻の如し。
まだ福岡にいて学生だった頃は、福岡からわざわざ北九州の小倉競馬場まで、通った、というほどではないが、何度か行った。当時私は学校も行かずにバイトばかりで留年を繰り返す劣等生だったが、そのバイト仲間と1台のクルマに乗り合わせて、高速道路を使って。まあ、ドライブがてらの競馬ですな。
もちろんその当時走っていた馬の名前なんかほとんど覚えていない。いくら勝った、とか、負けた、とか、いわゆる競馬の思い出というのもとくに記すべきものはない。もうはるか昔のこととはいえ、大勝したことがあればそれぐらいは覚えているだろうけど、覚えていない、ということは、記憶に残るほど勝ったことがない、ということだ。恐らく負けてばっかりだったので、さほどのめり込みはしなかったのだろう。まあそんなもんだ。
それでも、1つだけ、今でも鮮明に覚えている記憶がある。オグリキャップだ。オグリキャップといえば、競馬ファンなら覚えている方も多いであろう伝説のスターホース。地方競馬から中央競馬へ成り上がったというストーリー性もあって当時カリスマ的な人気を誇っていた。
しかし、盛者必衰の理。数々の栄光に輝いた名馬もさすがにそろそろ翳りがみえてきた1990年、オグリキャップ陣営がラストランの舞台に選んだのが、第35回有馬記念であった。いま調べたらそうだった。場所は中山競馬場。小倉競馬場では走ってない。だけど私は小倉競馬場で観た記憶がある。ということは、小倉競馬場のオーロラビジョンだかテレビだかで実況中継を観たのだろう。中継だったらどこででも観れるだろうに、わざわざ福岡から北九州まで行くとは、ご苦労な話である。それぐらい当時は競馬好きだったのかな?まったく覚えてないけど。
で、その年の有馬記念は、希代の名馬が有終の美を飾るのか、それとも世代交代の荒波には抗えず、老兵は消え去るのか、日本中の競馬ファンの注目が集まった。騎手が当時ノりにノっていた(馬だけに)武豊ということも相まって、いやがおうにも盛り上がった。レースのなかった小倉競馬場でさえそうだったのだから、このときの中山競馬場の熱狂ぶりは推して知るべし。いやあ、熱い時代だったなあ。
その結果は皆さんもご存じの通り、見事オグリキャップの優勝で幕を閉じるわけだが、勝った瞬間、周囲がどよめく中、若い男が「やったー!!」と大声で叫びながら私の横をすり抜け走り去って行った。そのあられもない嬌声と後ろ姿は今でも忘れられない。よっぽどの大勝負を張っていたんだろうなあ。もしかしたら人生を賭けていたのかもしれない。勝ってよかったね。後ろ姿だけみたところ小柄で冴えない感じの男だったが、今頃どうしているかしら。
ちなみに、そのとき私が勝った馬券は、わざわざ観に行くぐらいだからオグリキャップ絡みを買ったはずだが、これもはっきとは思い出せない。恐らく買ったのは買ったけど、儲かりはしなかったので、忘れてしまったのだろう。馬券は、当たれば儲かるとは限らない。重要なのは、買い方。だからねえ。あ、厳密にいえば、馬券は“買う”ではなくて、“投票する”です。でも、まあ、ここではそんな固いことは言わずに“買う”と表記しますことご了承ください。
その後、上京してからは競馬への興味は薄れ、その機会もなかったことから、競馬場へは一度も行ったことはない。いや、正確にいえば、競馬場の近くまで行ったことはあるが、入場したことはない。というのは、例の夕刊紙の記者時代、「競馬ファンが集まる店」といった記事の取材で中山競馬場と府中競馬場、それから錦糸町や水道橋のウインズ周辺をうろついたことがある。そのことを思い出したのでちょっとだけその話をしたい。
このときの取材前、担当編集者からは、「競馬場には“オケラ街道”と呼ばれる通りがある。その通り沿いに安くて人気の店があるはずだ」と、言われていた。オケラ街道。ある程度年配の競馬ファンであれば説明しなくてもわかりますよね? 競馬に負けてすってんてんになったオケラたちがぞろぞろ歩く帰り道。
ということで、ウインズはともかく、中山競馬場でも府中競馬場でも、まずはそのオケラ街道を探した。が、今はそんなのねえでやんの。入口にいた案内係の若い姉ちゃんに聞いても、知らない、という。どうやらオケラ街道という言葉自体、死語らしい。
それもさもありなん、だ。中山も府中も、駅から競馬場まで直通の広~い通路だか橋だかができていて、みーんなそこを通って競馬場へ入場。帰りもそこを通ってそのまま電車に乗るから、勝者と敗者とで帰り道が別れる、なんてことはなく、みーんな一緒、である。
したがって、競馬場周辺の呑み屋もほぼ絶滅状態。そりゃ、JRAはなるべく競馬場の中で飲み食いしてほしいだろうけど、少しは地域経済というのも考慮して、競馬場周辺の飲食店にもお金が落ちるようにしてあげればいいのにねえ。
それでも、足を棒にして歩き回ったかいあって、取材できる店はいくつか見つかった。中山競馬場では、駅とは反対側の寂れた商店街に、往年の名馬の蹄鉄や記念品などが店内に飾ってあるいかにもの店や、騎手が飲みに来るという店などもあった。そこで店の人やお客さんから色々と興味深い話を聞けた。取材中はおっとり、もの静かに話をしていたおとなしそうなオジサン(お客さん)が、店内のテレビでレースがはじまった途端、いけ、いけー!!と、人が変わったように、びっくりするような大声を張り上げたりして、面白かったなあ。
府中競馬場でも、駅から直通のバカ広い架橋のたもとに、昔ながらの、戦後の闇市さえ彷彿とさせるような呑み屋街が健在だった。架橋を通る人々からみればまさに下界、地の底で飲んでいるような気がして、これはこれで面白かった。予め馬券を買い込んで(今なら電話やネット投票かな?)、早い時間からそうした呑み屋に入り、酒を飲みつつ、焼鳥やモツ煮などつまみつつ、店内のテレビの競馬中継に一喜一憂。そんな休日の楽しみ方もありだなあ、と思った。休日平日関係ない人もいるかもしれないけど。
前置き(というには長々とすいません)はこれぐらいにして、先日のアラドラの競馬場ミーティングの話に戻る。このとき行ったのは、中山競馬場でも府中競馬場でもなく、大井競馬場。いわゆるローカル競馬だが、近年は「TOKYO CITY KEIBA」などと称してイメージアップに成功した、といっていいのかな? ここを選んだ理由はもちろん近くて行きやすいからだが、私も含めメンバー全員がさほど競馬には詳しくなく、馬の名前もろくに知らないので、G1など大きなレースでなくとも、とにかく競馬を楽しめればそれでよし、という理由もあった。そんな素人には大井競馬場、もとい、「TOKYO CITY KEIBA」はおすすめですよ。
さて当日、浜松町駅で集合して、モノレールに乗り、大井競馬場前で降りた。競馬場前、というからには、降りたらすぐわかるだろう、と思いきや、駅の真ん前にあるわけではなく、すぐにはわからない。でも、まあ少し歩けばたしかに近いのは近いので、迷うことはない。入口ゲートの看板はまだ日が高かったので電飾が点灯しておらず、くすんでいた、という言い方はよくないな、あまり目立ってはなかった。
ゲートをくぐり、100円の入場料を払って中に入る。あれれ、やってんのかな? と思うほど人が少なくガランとしている。競馬場はまだコロナから回復していないのかな。と心配になったが、先に進むとパドック周辺にはそれなりに人がいて安心した。さらに、本馬場、というのかな、レースが行われるトラックを見渡せる観覧席へ行くと、空席はあるものの、ガラガラで寂しい雰囲気ではなく、むしろ平日にしては結構人がいるなあ、と思った。やるじゃん、「TOKYO CITY KEIBA」。
では、早速馬券を買いますか。我々が入場したのは5時半ぐらい。この時点で8レース消化していたので、勝負は9レースから。でも、まあ、久しぶりだし、最初は様子見、ということで、とりあえず本命絡みの枠連2点を千円ずつ、計2千円分を買った。オッズは低いので当たってもたいして儲からないけど、いいんです、儲からなくても、楽しめれば。
と、軽い気持ちで買った馬券だが、なんと、その後観覧席に落ち着いて、馬券を確認しようとしたら、ない。失くした。どうやら、やれビールだ、つまみだ、と売店で買いものをしているうちに落としたらしい。阿呆だねえ、我ながら。
しょうがないので買い直したものの、なんだか戦意喪失し、もはや千円でももったいないような気がして、百円ずつ適当に何点か買った。もはや勝負は諦め、ただ単に、当てにいくだけ、という方針である。いいんだ、これで、楽しめれば。
やがて徐々に夜の帳が降りてきた競馬場で、心地良い風に吹かれながら生ビールを飲んだ。夜が更けるにつれて人も増えてきた。トラックもライトアップされていい雰囲気。そんな中、ビールを飲みながら考えた。ここでも野球場みたいにビールの売り子がいればいいのに。そしたらわざわざ売店に行かずともビールが飲める。売店と観覧席を行ったり来たりしなければ、馬券を失くすこともなかっただろう。
いや、馬券紛失は私ごとなので置いとくとして、ビールの売り子はぜひ競馬場でも導入していただきたい。というか、逆に、なぜ競馬場にはビールの売り子がいないか? 何かの規制でもあるのだろうか? 誰かご存じの方いらっしゃったら教えてください。
そんなことより馬券である。結果からいうと、当たった。オッズはたしか5~6倍ぐらいだったかな。もし馬券を失くさなければ、5~6千円の勝ち、だった。けど失くして買い直したのは百円だから、5~6百円の勝ち。いいんだ、これで。当たれば楽しいから。
この日のメンバーの中には競馬初体験の人もいて、ビギナーズラックもあった。儲けようと欲を出さず、ただ当てることを楽しむ競馬もいいもんだ。
そうして続く10レースも、何とか杯というその日メインの11レースも、同様に百円ずつをを数点、といいつつやはり欲は捨てきれず、本命に5百円、という買い方をして、当然のように5百円は外れて百円が当たった。2レースともに。
そして12レースを待たずに席を立ち、すっかり夜になってイルミネーションも輝いている競馬場を後にした。結局、3つのレースの馬券を買って、3つとも当たったものの、戦績はマイナス。金銭的には損したものの、遊び代と思えば安いもんだ。まあ、それぐらいのお金しか賭けなかったからだけど、それで充分楽しめたし、ビールも美味かったので、大満足である。また来たいねえ。
帰りは、出てすぐのバス停で大森駅行きがあったので、バスで大森駅まで行って、焼肉を食べた。入ったのは、前回のブログに登場した、9のつく日は半額になる、あの焼肉屋である。じつは私、この前日もここで半額の焼肉を食べた(たまたま夜勤明けと9につく日が重なったので)のだが、そのとき、1980円食べ放題コースがあるのに気がつき、これは皆さん連れて来なきゃな、と思っていたからだ。焼肉食べ放題が1980円って、安いよねえ。
まあ、この日は1980円ではなく、いくつかあるもっと高いコースを頼んだのだが、高いだけあって旨かった。この内容なら、高いコースでも高くはない(変な言い方だけど)。プラス1500円で飲み放題もつく。うん、いい店だ。けど、地下1階にあるせいか、いつもガラガラである。そのうち閉店しなきゃいいけど。
というわけで、大井競馬場でナイター競馬を楽しんだ後、大森駅前で豪勢な焼肉を食べるという、素晴らしい1日となった。競馬場内にはたくさん売店があり、美味しそうなものも色々売っててそそられたが、焼肉に備えてぐっと我慢(少しは食べたけど)してよかった。それにしても、今年はよく焼肉食べてるなあ。