プライドポテトと宗像市

湖池屋プライドポテト

引っ越しすると、買い物が不便になった。というと、どこの田舎の話ですか?と言われそうだが、まがりなりにも東京都下荒川区、地名でいうと「東尾久」と称する街の話である。引っ越しして新居となった我がアパートの最寄り駅は日暮里・舎人ライナーの「熊野前」駅。この舎人ライナーというのが、前回ブログでも触れたが、鉄道としては比較的新しくできた路線のせいか、普通なら駅前やその周辺に多かれ少なかれあるであろう商店街も繁華街も、コンビニも個人商店も、なーんもない。

まあ駅前に限らず、今は昔ながらの商店街が一部を除きほとんど寂れている時代である。シャッター街でも残っていればまだいい方で、いまや商店がすべて住宅やなんかに建て替えられ、商店街そのものがきれいさっぱり姿を消した、という例もよくある中、都心から離れた郊外、というか、住宅街にできた新しい駅の駅前に、なーんもない、のは、ある意味しょうがない。おそらくそのへんの田舎の駅よりなーんもない、のではないか。それが現在、私が住んでいるアパートの最寄り駅である。

それでも、いうても東京都のしかも23区内なんだから、コンビニぐらいはあるでしょう、と思いますよねえ。私もそう思っていた。けど、実際来てみれば、舎人ライナー「熊野前」駅前にはコンビニさえなくて、ちょっとビックリ。あるのは駅からちょっと歩いて都電荒川線(さくらトラム)の線路を渡ったところにドラッグストの「ぱぱす」、その2階に「サイゼリヤ」。それぐらいしかない。

東京さくらトラム(都電荒川線)

東京さくらトラム(都電荒川線)

まあドラッグストアが近くにあるのはありがたいけどね。最近のドラッグストアはたいてい食料品も充実していて、ものによってはスーパーより安いから。一人暮らしで自炊をしない人なら賛同してくれると思うが、インスタント食品や冷凍食品を買うなら、ついでにトイレットペーパーやティッシュや歯磨き粉など日用品も買えるドラッグストアの方が便利。私も引っ越す前、三ノ輪に住んでいたときは、近くにあった「ウェルパーク」という、2階もある結構大きめのドラッグストアをよく使っていた。あ、そういえばその「ウェルパーク」の貯まったポイントをまだ使ってないな。早いとこ使わなきゃ。

しかし、である。現在の私の生活パターンだと、自宅に帰ってくるのはほぼほぼ深夜か早朝。ドラックストアは開いてない。じゃあ休日に行けばいいじゃん、と言われれば、休日なんかねえよ、と、やや切れ。なにしろ今はバイト以外のほとんどの時間は店に詰めているからねえ。もちろんバイトが休みの日も、何か用事でもない限り店にいるか、店のための買いものに行くか、銀行や税務署などあれこれの用事で赴くか、とにかく自分のための時間というのがなかなかとれない。

だから引っ越ししてもう半年近くなるというのに、いまだに部屋の片付けが終わらず、相変わらず段ボールの山に囲まれて生活している。というのは私の怠慢の言い訳でもあるけど、今のところ休日もとらず店とバイトで働いて、昼間にゆっくり自分のための買いものに行く時間もない、というのは事実。でもないか。私がいなくても店は回るから、ほんとは私が店にいる必要はない。が、今は諸事情によりデリバリーの配達に行けるのは私しかおらず、私がバイトでいないときはデリバリーを止めている。だからデリバリーの注文を受けるためには、やっぱり私が店にいないといけない。と、そういう状況である。

要するに、今の私が自宅近辺で買いものするには、24時間営業もしくは深夜営業の店じゃないと使えない、ということで、これには困った。三ノ輪に住んでいたときは最寄りの三ノ輪駅の階段上がって(地下鉄だからね)すぐ目の前に「ワイズマート」という24時間営業のスーパーがあって、これが大変重宝した。便利なあまり、何も買う必要がないときでもついついふらりと立ち寄り、余計なものを買ってしまう、ということも度々あって、それもまた困りものだけど、コンビニより安い、という安心感もあるから、まあいっか、と。嗚呼、24時間営業のスーパー、近くに欲しいなあ。

とはいいつつ、先ほどコンビニさえない、と言っておきながらなんだけど、そこはそれ、腐っても(失礼)東京都内の荒川区、駅前にはなくても、ちょっと足を伸ばせばコンビニならすぐ見つかるわけで、一番近いのは、駅下りて自宅方向とは逆に2、3分ほど歩いた先にあるセブンイレブンの「熊野駅前店」。駅前というには駅から離れすぎじゃね?と思ったら、都電荒川線(さくらトラム)の「熊野前」駅が目の前にあった。紛らわしいな。それに、駅を下りて自宅とは逆方向に歩くのは億劫だけど、他にないからしょうがない。

二番目に近いコンビニは……駅からずいぶん離れた住宅街の中にローソンがあることはあるが、これは帰宅途中に寄れる距離ではないので、セブンイレブンではなくローソンに用事があるとき(めったにないけど)しか行かない。もう1軒、自宅から舎人ライナー「熊野前」駅とは逆方向、東京メトロ千代田線「町屋」駅へ向かい15分ほど歩けば、「ローソン100」がある。

この「ローソン100」には木曜と金曜の深夜の東京メトロ「表参道」駅での清掃バイト終了後、早朝の東京メトロ千代田線1番電車に乗って「町屋」で降り、そこから自宅まで歩けばその途中に寄れるので、木金の夜勤明け、つまり金土の早朝はもっぱら「ローソン100」を使っている。ご存じのように「ローソン100」は普通のコンビニより安いから。

但し、「ローソン100」は「熊野前」ではなく「町屋」に近いので置いといて、「熊野前」駅周辺の話に戻せば、とどのつまり、熊野駅周辺にはコンビニさえも1軒しかない、ということだ。昼間はともかく(セブンイレブン熊野駅前店の道路と線路を挟んで対面にスーパーがあることはあるが、遅い時間まではやってない)、深夜族にとってはまさに買いもの難民地帯。なのでしょうがなく、セブンイレブン熊野駅前店をよく使うようになった。けど、コンビニって、高い、よね。全体的にお値段が。貧乏人にとっては。

とくに今の私のように、赤字を垂れ流している店を維持するため、バイトで稼ぐ毎月の給料も、なけなしの貯金も、すべて店につぎ込んでいる身としては、コンビニでの買い物はもはや贅沢である。といいつつ、やっぱり、疲れて帰ってくれば、缶ビールの1本や2本ぐらいは飲みたいし、ちょっとつまむものも欲しいので、何度もいうけどしょうがなく、コンビニへ行く。

ビールとおつまみ

引っ越しする前は近所での買い物はほぼすべてドラックストアの「ウエルパーク」と24時間営業の「ワイズマート」、ときどきホームセンターの「オリンピック」(も徒歩圏内にあった)で済ませ、コンビニにはめったに寄らなかったのに、引っ越ししてからはコンビニ利用がめっきり増えた。とくに夜勤明けてそのまま店に行き、デリバリーなど長時間働いた後の帰宅時なんか、店でまかないのカレーを食べたからお腹は空いてないのに、ついついセブンイレブンに寄ってしまい、貧乏人には贅沢なビールとつまみにお菓子やなんやかんや色々買ってしまう。ダメだよねえ。

いや、ダメとわかっているなら、変えなきゃ、でしょ?と思い立ち、あるときから、店が終わって電車に乗る前、店の最寄り駅である東急大井町線「戸越公園」駅の駅前にある「東急ストア」で買い物を済ませることにした。それまではレジ袋を提げて電車に乗るのがなんとなくイヤだったので、買い物は電車を降りてからにしていたが、ちょうど私が帰宅するため「戸越公園」駅から電車に乗ろうとするその時間、「東急ストア」では総菜が半額になるのを知ってからは、電車に乗る前に「東急ストア」で半額の総菜を買うのがルーティンになった。意外なところで貧乏人の味方を発見した。そんな気分である。

もっとも、半額の総菜はある日とない日の品数の差が大きく、日によってはたくさんありすぎてどれを買うか迷ってしまうときもあれば、日によってはすべて売り切れているときもある。また、何度か通ううちにわかったのだが、私と同様、半額狙いの貧乏客も一定数いるようで、意外と競争が激しい。「戸越公園」駅の周辺はタワマンも結構建っているし、品川区だし、金持ちの住民が多い、というイメージを持っていたが、どうやらそうでもなさそうだ。「東急ストア」の半額の総菜の売れ方を見た限りでは。

いや、半額の総菜の話ではなかった。とある日の「東急ストア」での買いものの話である。いつものように「東急ストア」が閉店する23時少し前に立ち寄ると、その日は半額の総菜はすべて売り切れであった。半額の総菜がなければ、悪いけど「東急ストア」にはあまり魅力はない。お値段高めだし、商品ラインナップ少なめだし。あくまで私の個人的な感想ですが。

なので、半額の総菜がゲットできなければ何も買わずに「東急ストア」を出て、セブンイレブンなど他で買いものすることが多いが、その日はなんとなく、総菜がなければスナックでいっか、と気が向いて、ポテトチップスが並ぶコーナーへ行った。ビールのつまみにポテチ、私は結構好きですが、皆さんはどうですか?

ポテトチップス

ポテトチップスと一口にいっても色んな種類、銘柄、味が多々ある中で、私がいつも買っていたのは「堅揚げポテト」。堅くてカリカリの歯応えが心地良く、ビールにも合うんだよね。しかし残念なことに、「堅揚げポテト」は大幅値上げで貧乏人には手が届かなくなった。大袈裟ではないよ。もとから普通のポテチよりややお高めだった「堅揚げポテト」は、最近のなんでもかんでも値上げの風潮に便乗したのか、一挙に30円以上もの強気の値上げを敢行。どこの店でもだいたい179円ぐらいになった。

まあ他のポテチも軒並み値上げしているからしょうがない。とはいえ、10円20円の値上げなら許せるが、30円も値上げされると、もう手が出ない。って、いい年したオッサン(私のことです)が言うのも恥ずかしいが。

かくして、ほんとは買いたい「堅揚げポテト」をスルーして、じゃあ何を買おうか、と思案する私の目に止まったのが、「九州焼のり醤油」という文字。過去ブログで何度か触れたと思うが、私の出身は福岡県、つまり九州だから、こういうご当地商品で九州産のものがあれば、やはり応援の意味も込めてついつい手に取ってしまう。

その時もあまり深く考えず、その「九州焼のり醤油」と書かれた「プライドポテト」を買った。フライドポテト、じゃなくて、プライドポテトね。紛らわしいけど、あえて似せているのかな?湖池屋のそのシリーズは、私も過去何度か買ったことがある。神のり塩、とか、ぞっこん岩塩、とか、通の黒胡椒、とか、ネーミングがいいよね。しかしそのとき私が買ったプライドポテトは、まあ「九州焼のり醤油」とあるから醤油味なんだろうけど、その上に「日本の神業」などど大層な言葉もあしらわれており、これは初めてであった。神業、ときましたか。仰々しいねえ。

そして帰宅し、ビールを飲みつつ「プライドポテト」をつまみつつパッケージを見ていたら、「九州焼のり醤油」の文字の下に小さく、「宗像産 鐘崎漁港穴子使用」と書いてあるではないか。おお、宗像といえば、まさに我がふるさとである。鐘崎漁港には行ったことはないが、鐘崎の海水浴場にはよく行った。懐かしいなあ。まさか、ド田舎としか思っていない私の出身地が、こんな全国的に販売されている商品とコラボするなんて、田舎者としては青天の霹靂ともいうべき驚きである。いや、そこまでではないか。

福岡市と北九州市の間のちょうど真ん中あたりに位置する宗像市で幼少期を過ごした私は、高校も大学も福岡市へ通学していたこともあり、どこの出身ですか?と聞かれたら「福岡です」と答えている。「宗像市」と言っても知らない人の方が多く、説明するのも面倒だから。

ところが、何年か前に宗像市が世界遺産に登録されてからは、なるべく出身は「宗像市」と公言するようにしている。これで宗像市も有名になった、と思ったから。しかし意外に、私が「宗像市出身です」と言っても、「ああ、あの世界遺産になったところですね」みたいな反応する人はほとんどおらず、今でもさほど有名になった感はあんまりないけどね。世界遺産っても、有名になったのは“神宿る島”こと「沖ノ島」もしくは「宗像大社」ぐらいで、宗像市自体はあまり世界遺産の恩恵はないのだろう。まあそんなもんかもね。

宗像大社

宗像大社

おっと、話が逸れた。「プライドポテト」に戻る。パッケージの裏面にはこう書かれている。「日本の神業」とは、「日本が世界に誇る逸品食材。手間を惜しまないこだわりの技と、産地が織りなすおいしさは、まさに『日本の神業』。その想いを、ポテトチップスにのせて届けます」。さらに、「九州焼のり醤油」は、「宗像市で作られた九州で親しまれる甘味のある醤油、栄養豊かな有明海でとれたのり、鐘崎漁港で水揚げされた絶品の穴子。程よい甘さと芳醇な風味が広がる深い味わいに仕上げました」だって。

いや、知らなかったなあ。私は高校時代は毎日、地元宗像市の「赤間」という駅から福岡市の「吉塚」という駅まで鹿児島本線で通学していたが、その間に「古賀」という駅があり、そこは電車を降りた途端に醤油の香りが漂うような駅だったから、「古賀」で醤油作りが盛んなのはなんとなく知っていたが、たしか「古賀」は宗像市でない。宗像市で醤油が作られているのも聞いたことがない。

しかしそのパッケージにはこうも書かれている。「神宿る島・沖ノ島など豊かな海山に恵まれた福岡県宗像市。ここで作られる『宗像仕込み醤油』は、宗像市・福津市産の大豆と小麦を使用した『天然醸造』。四季に合わせ綿密に温度管理し1年以上じっくり発酵・熟成させます。香りを引き立たせる匠の火入れは、まさに日本の神業です」。へえ~、「天然醸造」が神業、なんでしょうなあ。初めて知ったなあ。

ついでにいうと、鐘崎漁港も玄界灘という好漁場で獲れる海産物が良質なのは聞いたことがあるが、穴子が有名だとは知らなかった。地元というか出身地なのに知らないことだらけ。それをまさかポテトチップスで知ることになろうとは。なんだか複雑な気分である。

で、肝心の味は?といえば、まあ美味しかったですよ。てか、正直いうと、よく覚えていない。というのは、じつはこの話は結構前のことで、この原稿を書いてアップするまでに相当時間がかかってしまったから。いや、すいません。なにせ前述したようにバイトと店で忙しくて、部屋の片付けも自分のための買いものの時間もろくにとれないぐらいだから、お許しください。次回はなるべく早めに上げます。

ちなみのこの「プライドポテト」の「日本の神業」シリーズ。「一袋からできる社会貢献」として、「本商品1袋あたり1円を、海の環境保全活動に取り組む宗像市に寄付します」とのこと。そりゃいい、また買おう、と思ったが、その次に「東急ストア」に行くともう売ってなかった。代わりにくまもと牛とかどこかの帆立とか他の産地になっていた。他の店でも探したがどこにも売ってなく、どうやら販売期間が終わった様子。残念。また再販してくれないかなあ。そしたらたくさん買うのになあ。

ということで今回はここまで。もう8月も半ば。暑い日が続いておりますが、体調など崩されぬよう、皆さんご自愛ください。ではまた。